当初から宝塚記念に狙いを定めていたデアリングタクト。完全復活への条件は本当に整ったのか

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 しかも、デアリングタクトにとって、やや忙しすぎるマイル戦は適距離とは言えない。そうしたことを鑑みれば、デアリングタクトはヴィクトリアマイルで自らの"らしさ"を存分に見せた、と言っていいだろう。

 そして次走、デアリングタクトはGI宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)に挑む。

 前走後にさまざまな検査を行なったが、幸いなことに脚元に異常は認められなかったという。この中間の追い切りの動きも上々で、騎乗した主戦の松山弘平騎手も「動きに素軽さが出た」と顔をほころばせた

 また、この宝塚記念に向けて何より強調したいのは、当初から狙いが"ここ"にあったということだ。

 前走のヴィクトリアマイルは明らかに試走。管理する杉山晴紀調教師によれば、マイル戦を使ったのは「スピード慣れ」を見込んでのこと。その効果が期待どおり出れば、宝塚記念では「出たなりで(いい)位置がとれる」という。

 すべては、宝塚記念で"完全復活"を果たすため――。

 デアリングタクトと同じ繋靭帯炎からの復活と言えば、2013年、2014年の天皇賞・春を連覇したフェノーメノが挙げられる。4歳時の天皇賞・秋直前に繋靭帯炎を発症。約9カ月ぶりのレースとなった復帰初戦のGII日経賞では5着に敗れたものの、続くGI天皇賞・春を見事に制した。同馬も"完全復活"の目標は2戦目にあった。心強い過去例である。

 ただ、それでもまだ、心配な声は尽きない。前出の専門紙記者が言う。

「3歳時のこの馬のパフォーマンスと比べると、4歳時の2戦、GII金鯱賞(2着。中京・芝2000m)と海外GIのクイーンエリザベス2世C(3着。香港・芝2000m)は、内容的に物足りない。もしかしたら当時から脚元の不調があったかもしれないけど、一方で、この馬は『3歳時がピークだった』『成長力に欠ける早熟系なのかも』という声がささやかれています」

 そういった懸念、疑問の声に対する答えは、宝塚記念ではっきりするはずだ。

 3歳時には史上6頭目の牝馬三冠を成し遂げた。GIジャパンC(東京・芝2400m)では、アーモンドアイ、コントレイルといった三冠馬たちとハイレベルな激闘を披露。今回のファン投票は7位ながら、その実績が示すポテンシャルは出走メンバーのなかでは一二を争う。

 はたして、希代の名牝は再び最高の輝きを放つことができるのか。注目のゲートがまもなく開く。

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