「ウマ娘」でもおとなしい性格のメイショウドトウ。宝塚記念で思い出すテイエムオペラオーとの執念の対決 (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 だが、逆転のときはやってきた。2001年の宝塚記念である。

 終始テイエムオペラオーの前でレースを進めたメイショウドトウ。4コーナー手前で早くも先頭をうかがうなど、これまでにないほど積極的に動いた。直線までに少しでもライバルより前に行こうという戦略だった。

 一方この時、テイエムオペラオーを囲む包囲網ができ、絶対王者は4コーナーで進路を失った。2頭の距離は大きく離れた。

 直線では、有馬記念のようにテイエムオペラオーが巻き返しを図るが、今度ばかりは譲らない。夏空の下、メイショウドトウの雄大な馬体と、鮮やかな青とピンクの勝負服が先頭を行く。実況を担当した杉本清アナウンサーは「ドトウ先頭、ドトウ先頭。ドトウの執念が通じるのか!」と声を上げる。

 そして、執念は通じた。5回の2着を経て訪れた逆転劇。テイエムオペラオーは2着だった。レース後、4コーナーの不利について審議のランプが灯ったが、入線順通りに確定した。

 このレースの後、2頭ともGⅠで好走を続けるが、タイトルを取ることはできず年末の有馬記念をもって引退。2頭の対決もここで終わったのだった。

 ライバル関係は数あれど、GⅠでこれだけ1、2着を続けたケースはないだろう。メイショウドトウにとってはほとんどが敗北だったが、最後に勝利をつかんだ。文字どおり、この馬の執念であり不屈の闘志が生んだ物語だ。

 ちなみに、引退後のメイショウドトウはほかの馬とも仲よく過ごしている。タヌキが居座ったこともあったといい、このエピソードはウマ娘にも反映されている。レースを離れれば、やはり温和な性格だったのである。

 そんなやさしいサラブレッドが、執念を見せた瞬間。2001年の宝塚記念は、忘れられないドラマである。

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