ウマ娘でも快走の奇跡の名馬・トウカイテイオー。皇帝と帝王、父子の物語

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 クラシック三冠のひとつ、G I日本ダービーが今年も開催される。トウカイテイオーの走りから改めて日本ダービーを振り返る。2021年5月24日に配信された記事をお届けする。

 大ヒット中のスマホゲーム「ウマ娘 プリティダービー」は、かつて実在した競走馬の生い立ちやキャリアを、"ウマ娘"というキャラクターで再現しているのが特徴だ。ただし、設定の都合上、現実とは少し中身を変えている要素もある。

ダービーで2冠を達成したトウカイテイオーダービーで2冠を達成したトウカイテイオーこの記事に関連する写真を見る そのひとつが「血統」だ。たとえば、ウマ娘のトウカイテイオーは、"皇帝"と呼ばれる先輩的存在のシンボリルドルフに憧れを抱いている。しかし、現実の2頭関係は「父子」であり、絶対的な強さを誇った"皇帝"シンボリルドルフの遺した最高傑作こそが、トウカイテイオーだったのだ。

 皇帝から帝王へ――。トウカイテイオーに宿った血のストーリーは、ぜひ競馬を見始めた人に知ってもらいたいものと言える。そしてそのストーリーを語るうえで、大きな分岐点となったのが日本ダービーだった。

"皇帝"と呼ばれた名馬、シンボリルドルフ。完璧無比のレースぶりで頂点に君臨し、1984年の3歳時(旧表記は4歳)には、史上初めて無敗のクラシック三冠馬(※皐月賞・日本ダービー・菊花賞を全て制する)になった。引退までに積み重ねた芝レースのGⅠタイトルは7個。これは、2020年にアーモンドアイが塗り替えるまで最多記録だった。いまだに「史上最強馬」として挙げる人も少なくない。

 そのシンボリルドルフが引退し、種牡馬として子を送り出す立場になると、初年度産駒から最高傑作が登場した。トウカイテイオーである。"皇帝"ルドルフを父に持つことから"帝王"と名付けられた。

 そうして実際にデビューすると、父の偉業に並びかける活躍を見せたのである。初戦から無傷の4連勝。次第に周囲は、父と同じ「無敗の三冠」を期待するようになる。5戦目となった一冠目のGⅠ皐月賞(1991年4月14日/中山・芝2000m)では、先行して早めに抜け出し、ライバルが外から来ても譲らず横綱相撲で勝利。父を彷彿とさせる完璧無比のレースぶりだった。

 レース後の表彰式で、鞍上の安田隆行騎手は手を挙げ、指を一本立てた。これは、シンボリルドルフが三冠を取った際、鞍上の岡部幸雄騎手が見せたパフォーマンス。一冠、二冠、三冠と取るごとに、指を一本、二本、三本と立てていったのである。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る