ウマ娘で小柄な「天才少女」として描かれるニシノフラワーの、クラシックを巡るアドラーブルとのライバル物語 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Sankei Visual

 そうして迎えた4歳初戦、陣営はGI桜花賞(阪神・芝1600m)を見据えて、当時は桜花賞指定オープン特別だったチューリップ賞(阪神・芝1600m)にニシノフラワーを出走させる。今でこそ、チューリップ賞は桜花賞に向けての最も理想的とされるステップレースであるが、当時はGII報知杯4歳牝馬特別(現・フィリーズレビュー/阪神・芝1400m)が桜花賞の前哨戦としての主流だった。なので、GI馬が4歳初戦にオープン特別を選んでくること自体が異例でもあり、「オープン特別では格が違う」という先入観から、単勝1.2倍の超断然評価でレースを迎えた。

 しかし、ここで立ちはだかったのが、最初のライバルとなるアドラーブルだった。ニシノフラワーは先を見据えて馬群のなかで控える形でレースを進めたが、これが仇となり、4コーナーでは出し所を失って後方に押し込まれてしまう。その間に外から一気に進出したアドラーブルが抜け出し、ニシノフラワーもどうにか追いすがるも、3馬身半差の完敗だった。

 実は、アドラーブルとは札幌3歳Sで対戦していた。当時はアドラーブルの方が2番人気と人気では上回っていたが9着に敗戦。しかし、このチューリップ賞では3番人気での雪辱となった。

 一方のニシノフラワー陣営は、レース運びに敗因を求めた。その結果、ここまで主戦だった佐藤正雄の鞍上を、ここまで桜花賞3勝の河内洋に譲ることとなった。

 迎えた桜花賞でニシノフラワーは1番人気だったが、アドラーブルは前走がむしろフロック視され、6番人気。レース展開は、これまでと一転してニシノフラワーが先行策を取り、4コーナーで先頭に並ぶと、そこへ並びかけてきたアドラーブルを直線で突き放して、ふたつ目のGIタイトルを手にした。

 続くGI優駿牝馬(東京・芝2400m)ではアドラーブルが勝利し、ニシノフラワーは7着で敗戦。秋の4歳牝馬GI最終戦のGIエリザベス女王杯(京都・芝2400m)は、タケノベルベットの前にニシノフラワー3着、アドラーブル4着とともに敗れ、これが2頭の最後の対戦となった。

 ニシノフラワーはその後、4歳春までの実績から、短距離~マイル路線に向かい、古馬相手に「飛び級」となる勝利を経て、その中心的存在となっていくのだが、それはまた別の話。

 余談ではあるが、桜花賞ではニシノフラワー420kgに対しアドラーブル408kg、オークスではニシノフラワー428kgに対しアドラーブル410kg。作中では最小柄キャラとなっているニシノフラワーよりも、実はアドラーブルの方がもっと小さかったのである。

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