ウマ娘では一流を目指すキングヘイロー。実際も、GⅠ勝利まで21戦挑み続けた超良血馬 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Sankei Visual

 ここまでGIでは10戦して未勝利。4歳の有馬記念以降はすべて他世代との対戦だったが、スプリンターズSを除くと、すべて勝ち馬は同世代。スプリンターズSも2着はその夏にフランスでGIを勝ったアグネスワールドだった。

 しかし、作中での「歩みを止めなければ、必ず栄光はつかめるものよ」のセリフのどおり、キングヘイローは挑戦を止めなかった。

 続いて出走したのが、自身2度目の芝1200m戦となるGI高松宮記念(中京・芝1200m)だった。これは決して破れかぶれの挑戦ではなく、燃えやすい気性面や、頭の高い走法を考慮して出走した2走前のスプリンターズSで見せた、4コーナー最後方、実況画面の外側からすっ飛んで来ての3着という、短距離への適性と可能性を見出してのものだった。

 レースは、ブラックホーク、アグネスワールド、マイネルラヴのいずれも短距離GIの勝ち馬に続く4番人気。しかし単勝12.7倍と、上位3頭とは水をあけられての4番人気だった。

 道中はメジロダーリングとアグネスワールドが引っ張る流れで、キングヘイローは中団でブラックホークを前に見る位置でレースを進めた。直線に入ると、先に抜け出したアグネスワールドを追ってディヴァインライト、ブラックホークが競り合うところに大外からキングヘイローがまとめてなで斬りにしてゴール。デビューから21戦目、同世代の馬たちのなかでは最も遅く、3歳時には誰もが予想しなかった短距離での勝利であった。キングヘイローは自身に適した舞台で大きな輝きをようやく放つことができた。

 ゲーム中でキングヘイローはアグネスデジタルとこう会話する。

「屈服させられた数が違う。笑われた数が違う。バカにされてきた数が違う」

「一流であると謳ったがゆえに、誰よりも地を舐め、その度に自分を変えて、立ち上がってきた」

「それこそが、このキングが永遠の一流である理由よ!」

 キングヘイローの勝利はこれが最後となり、同年末の有馬記念4着を最後に引退。種牡馬として牝馬2冠のカワカミプリンセスや、短距離GI2勝のローレルゲレイロを送り出した他、最近ではスプリンターズSを勝ったピクシーナイトや、阪神大賞典、フォア賞を勝ったディープボンドなど、母の父として、自身の現役時を彷彿とさせるように距離の長短を問わない活躍も目立っており、引退して20年を経てなお、"一流"を証明し続けている。

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