サウジカップ開催で日本馬が力を証明。ルメール騎乗での4勝など「日本デー」となった理由

  • 土屋真光●写真・文 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

多くの馬が次はドバイへ

 レッドシーターフHをステイフーリッシュで勝った直後、同馬を管理する矢作芳人調教師がそう振り返った。このタイプの馬場における日本調教馬の強さは、昨年にブリーダーズCフィリーアンドメアターフ(デルマー・芝2200m)をラヴズオンリーユーが制したことに代表されるように、もはや世界の常識になりつつある。言い換えれば、日本では2番手以下に甘んじているような馬でも、日本の外に出れば、こうしたタイプの芝であれば勝ち負けになるということだ。

 また、日本の競馬のアドバンテージは、ヨーロッパのようなシーズンオフがないこと。個々の差はあれども、季節を問わずに仕上げることができる環境が整っている。

 日本では一線級の壁が厚い、あるいは芝1400mやダート短距離のレースなどに出走していて中央競馬のGIに出ていない馬にとっては、GIIIという格付けに拘らなければ、賞金はレッドシーターフHが1着150万USドル(約1億7300万円)、その他のGIIIも90万USドル(約1億400万円)と破格。ましてや、輸送費や出馬登録料などが主催者負担で金銭的リスクは皆無なのだから、狙わない理由はない。それが見事に結果につながった形だ。

 今回勝利したうち、オーソリティとステイフーリッシュはドバイへと転戦し、前者はGIドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)、後者はGIIドバイゴールドカップ(メイダン・芝3200m)を目指すことになる。ほかにもセキフウ、エントシャイデン、ラウダシオン、コパノキッキングらもドバイへと向かう。今回勝った2頭はもちろんのこと、他の馬も日本以外からの注目度は上がるはずだ。

 また、勝利した4頭にすべて跨ったクリストフ・ルメール騎手にも触れねばならないだろう。4勝のうち3勝が逃げきり勝ち。ネオムターフCとレッドシーターフHの逃げきり勝ちは、あえてヨーロッパ型の流れにつき合わず、日本調教馬の持つスピードとその持続力を活かしてライバルを完全に手玉にとった。世界の競馬と、日本調教馬の特性を熟知しているからこその騎乗だったといえる。今年は中央競馬では重賞は未勝利だが、これを機に日本でも大暴れが期待できそうだ。

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