日本馬も12頭が出走するサウジカップ開催。超高額の賞金だけじゃない、世界の有力馬が集う魅力とは

  • 土屋真光●写真・文 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

世界の"競馬の勢力図"が変わる?

 さらに、サウジアラビア競馬が、自国のみならず中東域の競馬のプレゼンスを高めることに積極的であることも理由のひとつだ。

 ドバイワールドCに対するサウジC、GⅠドバイターフ(メイダン・芝1800m)やGⅠドバイシーマクラシック(メイダン・芝2410m)に対するネオムターフCのように、1カ月後に控えたドバイワールドC開催の各競走と条件的にリンクしやすい競走を設け、「ドバイへのハブ」として機能させることを通例化することに成功しつつある。実際にサウジC開催→ドバイワールドC開催と転戦する馬は、日本馬を含めて増え始めている。

コース内の様子コース内の様子この記事に関連する写真を見る さらにサウジアラビアは、ドバイやアブダビを含むUAE、同じように国際招待競走を3年前からスタートさせたバーレーンと3カ国連携で、双方の輸送、出走枠の確保といった緩和や融通を推進している。これはトップホースを集めることに注力するのではなく、この地域全体の競馬レベルの底上げを狙ったもの。実際に今回のサウジC開催では、パート2以下のカテゴリに属する国(日本やアメリカ、イギリス、フランスなどはパート1)の調教馬を対象にした招待競走も組んでいる。

 UAEはパート1だが、サウジアラビアを筆頭にカタール、バーレーン、オマーンといった周辺諸国はいずれもパート2ないし3だ。この恩恵は、スペイン、イタリア、チェコ、ノルウェー、スウェーデンといった国の馬も受けることができ、それらの国のトップホースの目標レースにもなりやすい。

 ドバイの競馬はコロナ禍の影響を大きく受け、賞金や各種経費のカットなど財政面にも及んでいる。こうした状況はサウジアラビア競馬の望んだものではなかったものの、同国の王族が積極的に世界各地で競走馬を所有する動きは活発で、ドバイとは対照的に競馬の活性化につながっている。

 サウジC開催を巡っては、これまでも常に直前までバタバタ劇があったり、オーガナイザーとしては未成熟な部分はある。しかし、これらの課題が払拭される頃には、中東だけでなく、世界全体の"競馬の勢力図"も変わっている可能性が高い。それこそがサウジアラビア競馬の狙いなのかもしれない。

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