日本馬も12頭が出走するサウジカップ開催。超高額の賞金だけじゃない、世界の有力馬が集う魅力とは (2ページ目)

  • 土屋真光●写真・文 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

高額賞金と破格の待遇

 ひとつは、なんといっても賞金の高さだろう。前述したメインのサウジCは1着賞金だけで1000万ドルで、日本円にすると10億円を軽く超える。同じ中東域の高額賞金レースの代名詞でもあるGⅠドバイワールドC(メイダン競馬場/ダート・2000m)が賞金総額で1200万ドル(約13億8000万円)、1着賞金が696万ドル(約8億円)とこちらも破格であるが、それすらも霞んで見えるほどのインパクトだ。

 ほかのGⅢ5レースも、レッドシーターフHが賞金総額250万ドル(1着150万ドル/約1億7000万円)、そのほかのレースが150万ドル(1着90万ドル/約1億円)。世界屈指の賞金水準であるJRAのGII毎日王冠(東京・芝1800m)が1着賞金6700万円で、昨年ディープボンドが勝利した仏GⅡフォワ賞(パリロンシャン・芝2400m)の1着賞金74100ユーロ(約950万円)と比較すると、とりわけGⅡ、GⅢレベルの馬にとっては夢のような条件だ。

 さらに、これらのレースは登録料・出走料がともに無料。オーナーや厩舎関係者の渡航・滞在費、馬の輸送費なども主催者負担の完全招待で、金銭的にノーリスクで出走できることも大きい。日本では、レース出走に必要な出馬登録料は3歳クラシックで総額40万円、そのほかの3歳以上のGIで30万円、GIIや2歳GIで10万円と他国と比較して極めて少額であるが、そのほかの国はより多くの登録料が発生することが通例となっている。

 たとえば同じ招待競走で、総賞金3000万香港ドル(約4憶2000万円)のGI香港カップ(沙田・芝2000m)は総賞金の1%の30万香港ドル(約420万円)、ドバイワールドCに至っては、12万6000ドル(約1450万円)を必要とする。

 こうした賞金やホスピタリティは、一線級ではなく、いわば「1.5線級」の馬にとって恩恵が大きい。一線級の馬であれば、当然これまでに獲得した賞金で高額登録料を賄うことができるが、特に欧州はまだシーズンオフで、一線級の馬は臨戦態勢にない。となると、この時期に稼働していて、シーズンインしてから上を目指したい馬にとっては、格好の力試しの場になる。仮に勝利できず2着以下でも、欧州で勝つのと同等、あるいはそれ以上の賞金を獲得できるチャンスがあるのは魅力だ。

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