関係者やファンの間で批判があるマルシュロレーヌに「賞なし」の真相。歴史的偉業は無視されたわけではない

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

「この過去の受賞馬との比較で、マルシュロレーヌの年間を通じての実績と認知度が低め、という点において『ライトファンへの認知度』という表現になってしまいました。BCディスタフそのものの認知度がライトファンに薄いという意図では、決してありませんでした。こちらの説明不足もあって、そうした表現で伝わってしまったことは猛省しています」

 無論、選定委員会はマルシュロレーヌの偉業を軽視することなく、「特別賞に相応しい」と言いきれるだけの理由も探したという。だが、深く吟味し、検討すればするほど、逆に消極的な要素が次々に出てきてしまったそうだ。

「いくつか例を挙げると、『日本馬が海外GIを勝つことが当たり前とは言わないが、昔よりもそうした光景は頻繁に見られるようになった。日本競馬の進化、進歩を考えれば、議論を行なって、その流れは見るべきだが、即特別賞までは考えなくてもいいのでは』『(2006年にオーストラリア最大のGIメルボルンCを制した)デルタブルースにしても、何も賞はもらっていないですし......』といったものです。

 そもそも自分は選定委員会に臨むにあたって、どちらかというと(特別賞授与の)"見送り派"ではありました。とはいえ、議論のなかで意見を変える気持ちを持ちつつ、ある程度の柔軟さを保って、フワッとした状態を残しながら出席することを心掛けました。そのうえで、ダイナミックに話が動くことがなかったので、自分は(特別賞授与に対する)賛成に手を挙げませんでした。

 おそらく他に賛成しなかった委員のみなさんも、『何が何でも反対』というわけではなく、それこそ"賛成45%vs反対55%"ぐらいの心境で、それがたまたま反対の票数として集まったのだと感じています。発言する際に誰もが『日本馬としてアメリカのダートGIを勝ったことはすごいけど......』と前置きしてから発言していたのが、ある意味、今回の選考における象徴と言えます。

 何にしても、選定委員の誰もが最初からマルシュロレーヌの特別賞授与にノーを叩きつけたわけではなく、『どちらかというと見送り』という判断だったことをご理解していただきたいです」

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