関係者やファンの間で批判があるマルシュロレーヌに「賞なし」の真相。歴史的偉業は無視されたわけではない (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 かくいう筆者も、マルシュロレーヌの偉業に対して"手ぶら"は無粋と感じた。ライトファンの認知度が低いというなら、特別賞の受賞という箔をつけることによって、ライトファンにも偉業の価値が認識しやすくなるのではないか。

 しかし、選定委員会のメンバーは競馬に深く関わってきた各種マスコミの代表者である。真剣に検討したことは明らかで、自らの感情に任せて反射的に反応してしまったことを恥じた。そこで、今年の選定委員会のひとりに直撃。マルシュロレーヌが未表彰に終わった理由について、改めて聞いてみた。

 すると、開口一番「まずは言葉足らずのコメントが独り歩きしてしまって、多方面に多大なる誤解を生んでしまったことを心苦しく思います」とコメント。その選定委員にあっては、反響の大きさからくる心労をかなり抱えていると感じた。

 その様子からして、苦渋の結論であることも伝わってきて、突っ込んだ話を聞くのはどうかと思ったが、彼は選考過程について詳細に語ってくれた。

「まず大前提として、マルシュロレーヌのBCディスタフ優勝は大きな偉業です。当然のことながら、そこは選定委員会のメンバー全員が認識していました」

 ただし、特別賞の選出についてはいくばくかの注文がついたという。

「ここから先は自らも思ったことですが、まず大きかったのが、過去の受賞馬との比較です。自分は過去の選定には直接関わっていませんが、2016年のモーリスや2020年のクロノジェネシスは年間を通して実績を残しており、年度代表馬に匹敵する活躍でした。

 それに比べて、マルシュロレーヌはBCディスタフ一戦の成績が飛び抜けたもの。瞬間最大風速的にはものすごいことですが、誤解を恐れずに言えば、年間で積み上げてきた実績はどうなのか。チャンピオンズCを圧勝したテーオーケインズがいなければ、マルシュロレーヌが最優秀ダートホースに選ばれていたのかどうか。そこで、自分は首を縦には振れませんでした」

 ここで、彼は問題が大きくなった発言についても言及した。

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