ウマ娘をきっかけに人気再燃。有馬記念で3年連続3着と競馬ファンに愛された名脇役・ナイスネイチャのストーリー (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Sankei Visual

 この日は何かが違った。そう言っても、過言ではないかもしれない。レースでは13頭中12番手と、かなり後方の位置取り。前半では、ウイニングチケットなどの有力馬を前に見ていたが、動きがあったのはレース半分を越えたあたり。ナイスネイチャが一気に仕掛けたのだ。

 直線手前ではすでに4番手の位置取り。ウイニングチケットはすでに後ろにいた。画面からも伝わる勝利への気迫。長くコンビを組んできた松永騎手が懸命に追うと、ライバルを交わしてゴール。念願の金メダルは、真夏の中京競馬場にあった。

 ゴールの瞬間、スタンドからは大きな拍手が湧いたという。ただの1勝ではない。2年7カ月をかけてつかんだ白星に、ファンは心から祝福した。

 1994年の有馬記念では、4度目の3着とはならなかったものの、5着に好走。ただ、このあたりからさすがにピークをすぎたのか、以前のようなレースはできなくなった。5度目の有馬記念で9着に負けると、翌年11月、ついに引退を迎えた。

 白星ばかりの派手なキャリアではなかったかもしれない。むしろ、負けたレースのほうが多かった。しかし、つねに一生懸命走り、上位に名を連ねたその競走生活は、間違いなく勝利に値するものだったと言える。だからこそ、いまだにこれだけの人たちに愛されている。

 勝つことだけが正しいのではない。敗北のなかにも語られるストーリーがある。ナイスネイチャは、まさにその代表だろう。名脇役が愛した有馬記念。今年もきっと、いろいろなドラマが生まれるに違いない。

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