ウマ娘でも描かれるダイワスカーレットとウオッカのライバル関係。秋華賞や天皇賞・秋で見せた伝説の名勝負

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 場内に流れるスロー映像を見ても判別が難しい大接戦。東京競馬場は、リプレイのたびに大歓声が上がった。勝ちタイムの1分57秒2はコースレコードである。

 写真判定の末、勝ったのはウオッカ。負けたダイワスカーレットにも惜しみない拍手が送られたのは言うまでもない。しかし騎乗した安藤勝己は、オーバーペースになったことを理由に、騎手としては一番ひどい競馬だったと述懐。それでも接戦に持ち込んだことから、能力はウオッカより相当上だと言っている。

 それを証明するかのように、次走では改めて強さを見せつけた。天皇賞・秋から約2カ月後、昨年のリベンジで挑んだ有馬記念である。

 このレースでも、スタートから逃げたダイワスカーレット。天皇賞のようなかかり気味ではないが、ここでもそれなりに早いペースを刻んだ。中盤に差し掛かると、牡馬の人気どころが次々に先頭を捕まえようと動いてくる。しかし、颯爽と逃げる栗毛の馬体を捉えることはできない。むしろライバルがバテていく。そんな光景が展開された。
 
 小細工なしの真っ向勝負で、有馬記念を走ったのである。このペースについてこられるのかと。そして、最後まで堂々と逃げきった。その厳しさを物語るように、道中でダイワスカーレットに挑んだ人気馬は力尽きて後退。このペースにつき合わず、後方から進んでいた馬たちがゴール前で上位を独占していた。

 ダイワスカーレットは有馬記念以降も現役続行の予定だったが、ケガにより引退。このすばらしいパフォーマンスが最後となった。

 改めて成績を振り返ると、ウオッカとの直接対決は計5回。そのすべてで、戦前の人気はウオッカの方が上だった。一方、直接対決の結果はダイワスカーレットの3勝、ウオッカの2勝となっている。スタートから軽やかに先行し、堂々と押しきる。ウオッカとのライバル関係を含め、ダイワスカーレットは間違いなく2000年代を代表する名牝である。

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