ウマ娘でも描かれるダイワスカーレットとウオッカのライバル関係。秋華賞や天皇賞・秋で見せた伝説の名勝負 (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 結局、ゴールまで栗毛の馬体は先頭を譲らず、ダイワスカーレットは後方から追い上げるウオッカを尻目に先頭でゴール。2着レインダンスとの着差(1馬身4分の1)は決して大きくないが、相手がくればいくらでも伸びるような、着差以上の強さだった。一方、ウオッカは3着まで追い上げるのが精一杯。

 その後、ダイワスカーレットは古馬牝馬を相手にしたGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を勝ち、さらに古馬の牡馬も混じった年末のGI有馬記念(中山・芝2500m)でも2着と力を見せる。この有馬記念にはウオッカも参戦したが、11着に沈んだ。

 牝馬でダービーを勝つような大仕事をしつつ、時には大敗もあったウオッカ。対するダイワスカーレットは、2着以内を外したことがなく、安定感抜群。レーススタイルやキャラクターを含め、対照的な2頭だった。

 そんなライバルの直接対決は、翌2008年の11月まで見られなくなる。というのも、ダイワスカーレットは有馬記念の後に4月の復帰戦を快勝したが、その後、脚元の不安で春シーズンを全休。約7カ月ぶりに挑んだGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)が復帰戦となった。

 そしてこのレースが、ウオッカとの最後の直接対決であり、後世に語り継がれる名勝負となった。

 ダイワスカーレットが休んでいた間に、スランプ気味になりながらもGIを勝ってきたウオッカ。こちらはケガもなく前哨戦を戦い、天皇賞・秋では万全の状態。1番人気に支持された。

 一方、ダイワスカーレットは長期休養明けの不安から2番人気に。そしてその不安はスタート直後に表れた。珍しく、安藤勝己がダイワスカーレットの手綱を強く引っ張っていたのだ。久々のレースで力み、引っかかってしまった。

 計測された前半1000mのラップタイムは58秒7。これは少し早いペースだった。直線では、早々とウオッカに並びかけられてしまう。

 休み明け、オーバーペースの逃げとなれば、今回は沈むのも仕方ない――。そんな気持ちが生まれたのもつかの間、ライバルの姿に奮起したかのように、ダイワスカーレットはふたたび力強く伸びた。外から追うウオッカ、懸命に内で粘るダイワスカーレット。どちらも譲らぬゴール前。男勝りの馬体が2つ並んだところがゴールだった。

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