ウマ娘の初代主人公・スペシャルウィーク。その数奇な運命、武豊との出会い、ダービー優勝 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by AFLO

 第1弾の皐月賞を1番人気ながら3着と落とし、またも"嫌なムード"が若干漂っていた1998年の日本ダービー。それでも圧倒的1番人気となったスペシャルウィークと武騎手は、スタートから中団を進む。そして直線、馬群の間を割って抜け出すと、ここからが早かった。一瞬の加速で瞬く間に後続を突き放したのだ。

 ゴールまで勢いは衰えることなく、終わってみれば5馬身差の圧勝。勝つ時はこれほどあっさり決まるものか、と思った記憶がある。

 しかし、実際は相当な重圧を感じていたのだろう。直線で抜け出した時、武騎手はムチを落としてしまったのだ。さらにゴール後、彼は生涯でも一、二を争うほどの大きなガッツポーズを見せていた。

 天才ジョッキーが重圧を背負うなか、そのプレッシャーを跳ね除けて力強く抜け出したスペシャルウィーク。あの時の頼もしさが印象に残っている。幼い頃から波乱の境遇で育った馬にとって、また、ダービーに手が届かなかった若き名手にとって、最高の人馬の出会いだっただろう。

 このコンビの快進撃は、翌1999年も続いた。なかでも印象的なレースは、1999年11月28日に行なわれたGⅠジャパンカップ(東京・芝2400m)である。

 4歳となった1999年春、スペシャルウィークは武騎手とともに2つ目のGⅠタイトルを獲得。競馬界を引っ張る1頭になっていた。秋も、格下相手の前哨戦でまさかの7着大敗を喫しながら、続くGⅠ天皇賞・秋(東京・芝2000m)を後方一気の追い込みで勝つなど、実力は健在だった。

 そんな復活劇の直後、11月のジャパンカップで大仕事が舞い込む。当時「世界最強」と言われ、ヨーロッパ伝統のGⅠ凱旋門賞(フランス・芝2400m)を制したモンジューが参戦することになったのだ。

 そしてこの一戦は、単に世界最強馬を迎え撃つだけの話ではなかった。モンジューに対しては、特別な因縁があったのだ。

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