「ウマ娘」再注目のゴールドシップ。語り継がれる唯一無二の走り

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 レース内容は昨年のリプレイのような、鮮やかな先行抜け出し。それ以上に有名なのは、レース後の横山騎手のコメントだ。スタートから、ゴールドシップに「お願いします、走ってください」と祈り続けたという。また、調教では「賢い馬なので、気分を害さないためにもムチを入れなかった」とも話していた。結果、マジメに走り続けたのだろう。

 その後、海外のGⅠ凱旋門賞(フランス・芝2400m)にも挑戦したゴールドシップ。6歳(2015年)になると、横山騎手とのコンビで5月の天皇賞・春を勝利。GⅠの6勝目を飾った。このレースも、後方から圧巻のロングスパートを披露。無尽蔵のスタミナは、祖父メジロマックイーンの血から来るものだろう。

 ゴールドシップにとって、天皇賞・春が最後のGⅠ勝利になった。がしかし、この馬の物語を記すには、続く宝塚記念での"事件"も忘れられない。

 4歳、5歳と連覇していた宝塚記念は、間違いなく得意舞台。3連覇への期待は高かった。さらに、前走の天皇賞・春では"らしい"ロングスパートを見せて、調子もよさそう。これといった死角は見当たらず、当日は1.9倍の大本命となった。

 その宝塚記念のスタートで、事件が起きた。ゲートに入ったゴールドシップは突如暴れ出し、スタートのタイミングで大きく立ち上がって出遅れてしまう。この時点で1秒近い遅れとなり、勝利は絶望的に。結局、15着に沈んでしまった。

 GⅠの大本命馬が、大出遅れでレースを終えてしまったのである。通常なら、馬券を買ったファンの怒りで埋め尽くされそうなものだが、ゴールドシップの場合は、この出遅れさえ"らしさ"や"個性"として愛された。それこそが、この馬が唯一無二の存在である証しだろう。

 6歳で引退したあと、現在は種牡馬として、子どもたちをレースに送り出している。今度は種牡馬として、新しい伝説を残すかもしれない。"本家本元"のゴールドシップは、いまだ健在である。

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