「ウマ娘」再注目のゴールドシップ。語り継がれる唯一無二の走り (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 皐月賞当日、勝負のポイントになったのが前日の雨だった。芝は水分を含み、ただでさえ消耗していた馬場の内目はコンディションが悪化。そこで、スタートから各馬は内側を避け、数頭分大きく空けて馬場の良い外目を進んでいった。

 ゴールドシップは、18頭立ての最後方からレースを進めていたが、3コーナーから一気にスパートを開始。ここで驚いたのは、その進路だ。各馬が変わらず外を回るなか、ゴールドシップは、ただ1頭、ぽっかりと空いたインコースへ突き進んだのである。

 前方のライバルが外へ膨らむ状況で、さらにその外を回って後ろから追い上げようとすれば相当な距離ロスになる。鞍上を務める内田博幸騎手の判断により、距離ロスのないインコースを狙ったのだった。

 もちろん、内目の悪い馬場に脚を取られるリスクはあった。しかし、ゴールドシップはそれをものともせず、怒涛のスパートを見せたのだ。最後方にいた芦毛の馬体は、3、4コーナーで10頭以上交わし、いつの間にか先頭の背後へ。まるでワープしたような感覚だった。その後、直線で先頭を交わすと、最後は独走でゴールに飛び込んだのだ。

 ただ1頭、荒れた内目の進路を選び、一気のスパートで勝利したゴールドシップ。この馬の個性が最初に輝いた瞬間だった。

 これ以降も、ゴールドシップはいくつもの伝説を作った。予測できない行動を起こし続けた存在であり、破天荒なエピソードは数え切れないほどあるのだ。

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