藤田菜七子が海外遠征で見せた成長。先輩女性騎手としてより逞しく (3ページ目)

  • 土屋真光●文・撮影 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 最終戦を残したとところで総合3位。最終第4レースで地元騎手に逆転を許したが、それでも総合4位タイ、7人の女性騎手の中では1位タイの成績を残した。

 この1日目で、印象に残った場面がふたつあった。

 ひとつは、引き上げてきた時の姿だ。

今回のレースでは最重で61.5kg、最軽量でも58.5kgの斤量での騎乗だった。普段の日本でのレースよりも10kg近く重い鞍を乗せ、レース後には馬を全力で追い息が上がっている状況でそれを自ら運び、後検量を受けなければならない。5年前のデビュー年にアブダビで騎乗した際は、同じような斤量の鞍を運ぶだけでもひと苦労だったが、今回の藤田は、しっかりと鞍を抱え、胸を張ってひょいひょいと歩いていた。確実に、筋力がアップしたことがわかる。

重い鞍を軽々と運ぶ藤田

 もうひとつ印象的だったのは、レース後の談話だ。

藤田は「勝ちたかったので、すごく悔しいけど......」と口にしたあと、「いつも以上にリラックスして乗れたことで楽しめました」と明るい表情で続けた。藤田はコメントを慎重に選ぶタイプで、生来の生真面目さと負けず嫌いの性格も相まって、負けた際には「悔しかった」「乗せていただいたのに申し訳ない」といった言葉が並ぶことが多かった。それだけに、明るく「楽しかった」とコメントしたことに驚かされた。

 翌日の取材でも、いい意味で開き直っていることが感じられた。藤田に対して、デビュー前の永島と古川に向けたコメントを求めると、「負けることのほうが圧倒的に多い競技なので、負けたことを引きずらないで切り替えることが大事」と答えた。それはまさに、これまでの藤田に向けられていた言葉だった。

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