藤田菜七子が海外遠征で見せた成長。先輩女性騎手としてより逞しく (2ページ目)

  • 土屋真光●文・撮影 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 藤田にとっては、2019年8月のイギリス・シャーガーカップ以来1年6カ月ぶり、6度目の海外遠征。本来であれば、昨年もこの競走に出場していたはずだったが、直前のレース中に落馬、骨折というアクシデントがあって見合わせとなっていた。

 1年遅れでの参戦だが、すんなりと決まった話ではない。参戦すれば日本政府の検疫ルールに則って、帰国後は14日間の自宅待機となり、当該週も含めると3週間も日本で騎乗ができなくなるからだ。

 デビュー以来、右肩上がりに増えていた藤田の勝ち星は、昨年に初めて前年を下回った(2019年は43勝、2020年は35勝)。前述の骨折によって戦線離脱したことが大きな要因で、不運な部分もあったが、負けず嫌いの藤田は結果にまったく満足していなかっただろう。

 単純に勝ち星のことだけを考えれば、今年も遠征を見合わせ、日本でのレースで騎乗数を確保することもできたはず。しかし、藤田はサウジ遠征を選んだ。目先の勝利数ではなく「経験」を取ったのだ。日本で騎乗できない期間をマイナスに捉えず、骨折で離脱した昨年と同じくらい休んでも勝ち星は上回ろう、と腹を括った決意の表われのようにも思えた。

 実際に4つのレースでの騎乗でも、随所で気持ちの強さが見えた。

 第1レースでは、スタートで行き脚がつかなかったが、道中は後方で控えて追走。4コーナー付近でも周囲が激しく動くのに対して冷静に"待ち"を選択し、そこで溜めた脚を直線で爆発させる。勝ち馬こそ捕まえきれなかったものの、ごぼう抜きで2着といきなり魅せた。

 続く第2レースでもスタートが決まらなかったが、最後の直線でしぶとく伸びて5着を確保。この騎乗には、出走馬を管理する地元の調教師も大変な喜びようで藤田を出迎えた。さらに第3レースは4コーナーで早々に先頭に立ち、最後は失速して6着に終わったものの直線半ばまで見せ場を作った。

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