歴史が証明。クラシックを制すのはトライアルシーズンに「化けた」馬 (4ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 ただしその間、徐々に成績を上げて、3歳(当時4歳)になってからはオープン、重賞でも常に勝ち負けを演じるようになった。桜花賞トライアルのGII4歳牝馬特別(当時。現フィリーズレビュー/阪神・芝1400m)で3勝目を挙げ、桜花賞でも4着と健闘したのだから、使われつつ状態が上がっていったのは明らかだ。

 それでも、さほど目立った存在ではなかったのは確か。それゆえ、この馬がクラシックで戴冠を果たすことなど、なかなか予想できなかったに違いない。

 しかも、この年の牝馬は粒ぞろいだった。無敗の二冠を狙うアグネスフローラをはじめ、ダイイチルビー、ケリーバッグ、キョウエイタップなど、現在にも名牝として語り継がれている面々がズラリと名を連ねていた。

 まさかそこで、調子を上げてきただけの、なおかつ13戦も戦って新鮮味に欠けるエイシンサニーが勝つことなど、さすがに考え難かった。

 だが、GIオークス(東京・芝2400m)で頂点に立ったのは、エイシンサニーだった。

 直線を迎え、先行したケリーバッグを大本命のアグネスフローラがかわして抜け出すと、誰もが同馬の勝利を確信したことだろう。しかしその刹那、エイシンサニーが内からスルスルと伸びてきた。そして、アグネスフローラとの激しい叩き合いの末、最後は4分の3馬身差をつけて同馬をねじ伏せた。

 素質、調子、父ミルジョージ譲りの長距離適性、それらがオークスでかみ合った。改めて言うが、かみ合った時の素質馬はすごい能力を発揮する。

 ここに挙げたのは、ほんの一例にすぎない。このような逆転劇は、トライアルシーズンからクラシック本番にかけて、毎年のように繰り返されている。

 今年も上位陣につけ入る隙があるとすれば、まだ"伏兵以下"の扱いをされている1勝馬の中にも、ここから急上昇して主役級へとジャンプアップしてくる馬が出てくる可能性は大いにある。

 それは「自分のPOG馬はさっぱりだ」と嘆いている、あなたの指名馬かもしれない。

 本当の勝負は、まさにこれからだ。

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