歴史が証明。クラシックを制すのはトライアルシーズンに「化けた」馬 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 また、人間のアスリートと同じくサラブレッドも、本番に向けてグングン調子を上げていくことも重要である。かつて、クラシックシーズンに入って「この時期によくならない馬はクラシックで勝てない」と、関東のベテランジョッキーからも聞いたことがある。

 そこで思い出すのは、1997年春に皐月賞とGI日本ダービー(東京・芝2400m)の二冠を果たしたサニーブライアンだ。

 皐月賞を迎えるまでの戦績は、8戦2勝と平凡なものだった。ゆえに、皐月賞では11番人気と低評価にとどまった。ところが、いざふたを開けてみると、大外枠からあれよあれよと逃げ切り勝ち。まんまと戴冠を遂げた。

 ただ、皐月賞は先行有利の中山が舞台だったこと、有力馬に差し、追い込みタイプが多かったこともあって、勝ったのは「フロック」と言われた。おかげで、ダービーでも単勝13.6倍の6番人気と伏兵扱いだった。

 しかしそこでも、サニーブライアンは大外枠からあっさりと逃げ切り。二冠馬となったのだ。

 勝因は何か?

 ひとつは、もともとサニーブライアンにはそれだけの素質があった、ということ。そしてもうひとつは、先に触れたベテランジョッキーの「この時期によくならない馬は......」という言葉があるように、馬自身が着実に調子を上げていた、ということだ。

 事実、調教ではどの馬と併せても負けたことがなく、「調教横綱」の異名を持つスピードワールドという馬に、サニーブライアンはダービー前の調教で先着していた。最も重要なレースを前にして、持てる素質と体調がかみ合い出していたのだ。

 牝馬で"劇的に化けた"1頭を挙げるとすれば、1990年のオークス馬エイシンサニーだろうか。

 デビュー4戦目にして未勝利を勝ち上がり、それからもずっとコンスタントにレースを使われ、クラシック初戦のGI桜花賞(阪神・芝1600m)が13戦目だった。今なら「使いすぎ」と批判されかねないほどの臨戦過程だ。

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