歴史が証明。クラシックを制すのはトライアルシーズンに「化けた」馬 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 同馬は、3歳の春に皐月賞トライアルのGIIスプリングS(中山・芝1800m。※2011年は阪神・芝1800m)を勝つまで、単なる1勝馬という身だった。それまでは5戦1勝という戦績。しかしその間、あれこれもがき続けた結果が、のちにこの馬を三冠馬にしたとも言える。

 競走能力は高い。だが、気性面に難がある。それが、デビュー当時のオルフェーヴルの評価だった。

 なにしろ、デビュー戦で鮮やかな勝利を飾りながら、ゴール後に鞍上の池添謙一騎手を振り落とした、というのは有名な話。さらに、そういったやんちゃぶりだけでなく、レースぶりもハチャメチャで、出遅れたり、引っかかったり、自分勝手に走っては負けた。デビュー3戦目のGII京王杯2歳S(東京・芝1400m)では、10着と大惨敗を喫している。

 そうした状況にあって、「このままではいけない」と思った陣営は、「レースで成績を上げるより、優先すべきは馬の成長を促すことだ」と判断。クラシックに向けて、結果を出して賞金を加算しなければいけない時期に、あえて放牧に出したり、レースに使っても負けを覚悟で、馬に「競馬には我慢することも必要だ」と教え込もうとしたりした。

 そのため、明け3歳で参戦したGIIIシンザン記念(京都・芝1600m)、GIIIきさらぎ賞(京都・芝1800m)は、いずれも2着、3着と敗れた。当然、クラシック候補としての評価は下がった。

 だが、馬は着実に競馬を覚え、競走馬として成長していた。

 こうして迎えたスプリングS。オルフェーヴルは道中後方で我慢して、タメにタメた末脚を最後の直線で一気に爆発させた。

 その勢いのまま、クラシック初戦のGI皐月賞(中山・芝2000m。※2011年は東京・芝2000m)を圧勝。以降は周知のとおり、すべてのレースで圧倒的な強さを見せて三冠を達成し、古馬相手のGI有馬記念(中山・芝2500m)も快勝した。

 この時期、サラブレッドが急成長することを、オルフェーヴルは身をもって教えてくれた。

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