有馬記念で史上最高の復活劇。トウカイテイオーが起こした奇跡に感涙 (3ページ目)
注目のゲートが開く。
大方の予想どおり、メジロパーマーが逃げる。トウカイテイオーは好スタートを切ったものの、次第にポジションを下げて、中団あたりに待機。2周目の3コーナーを迎えて、全体のピッチが上がり始めると、トウカイテイオーも徐々に進出を開始した。
4コーナーから直線にかけて、5~6頭が先行馬群を形成していったが、その中で、他とは脚色が明らかに違う2頭がいた。
1頭は逃げるメジロパーマーをかわして、早め先頭に立った1番人気のビワハヤヒデ。前を行く馬を早々にとらえて、そこから突き放すのが、この馬の勝ちパターン。ゆえに、ビワハヤヒデが抜け出した瞬間、多くのファンが同馬の勝利を確信したのではないだろうか。
だが、脚色のよかったもう1頭の馬、トウカイテイオーがビワハヤヒデに猛然と迫ってきた。
残り200mの地点で、2頭は馬体を合わせて、そこから壮絶な叩き合いとなった。
外からグイグイとかわしにかかるトウカイテイオー。1年ぶりのレースとは思えないほど、力強く、覇気があふれる脚取りだった。
対するビワハヤヒデも懸命に耐えるが、迫力あるトウカイテイオーの走りには堪えきれずに半馬身、かわされた。そこが、ゴールだった。
場内にいるファンのほとんどが、目の前で起こる"奇跡"に引き込まれていった。やがて、そのシーンを目の当たりにした興奮と感激がじわじわと広がっていく。ゴール後、しばらくして場内のあちらこちらで"テイオー・コール"が沸き起こった。
勝利ジョッキーインタビューで、手綱を取った田原成貴騎手が男泣きしながら言葉を紡いだ。
「きつかったと思うんですけどね。本当にすごい馬です。ゴール後は思わず『ありがとう!』って、声をかけました」
実に364日ぶりの勝利。これは、長期休養明けのGI勝利記録として、いまだに破られていない。有馬記念が近づくと、このトウカイテイオーの奇跡の復活劇を思い出す。
さて、「暮れの中山にいる」という"競馬の神様"は、今年はどんなドラマを用意しているのだろうか。
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