ウオッカが主役、阪神JFの衝撃。伏兵から名牝への道を歩み始めた一戦

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 下馬評どおり「アストンマーチャンの楽勝か」と誰もが思ったことだろう。だが、ゴール手前200mあたりから、外から猛然と追い込んでくる馬がいた。

 直線に入って、馬群の外へ進路を取ったウオッカだった。

 ザクッ、ザクッと蹄が芝を噛む音が聞こえるかのように、力強い脚取りで、一歩、また一歩とアストンマーチャンとの差を詰めてくる。

 この時、ウオッカの末脚は鉈のような切れ味を見せた。

 脚色で勝るウオッカがアストンマーチャンとの差をみるみると縮め、馬体を並べると、さらにグイッとひと伸びして突き放した。そこが、ゴールだった。

 勝ち時計は、1分33秒1。当時の芝1600mにおける2歳馬レコードだった。

 ウオッカにとって、"伏兵"から"主役"に名乗りを挙げた一戦であり、のちにダービー制覇を果たし、GI通算7勝をマークする、名牝への階段を刻む第一歩でもあった。

 今年も、まもなく阪神JFのゲートが開く。その注目の舞台を前にして、ウオッカの「牡馬勝り」と言われた豪脚を思い出した。

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