ダートの頂上決戦を前にして思い浮かぶ、怪物クロフネの衝撃の「鬼脚」 (4ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

 そこからは、引き離す一方。冒頭でも触れたとおり、2着に7馬身差をつける圧勝劇を披露した。勝ちタイムは、2分5秒9。これまた、いまだ抜かれていない日本レコードである。

 通常、ダート戦のレコードは時計が出やすい重馬場や不良馬場で計測されることが多い。しかし、クロフネが保持するレコードはいずれも良馬場で記録されている。それこそ、クロフネが「怪物」とされる所以でもある。

 アメリカから参戦したリドパレスには、世界的な名手として知られるジェリー・ベイリー騎手が騎乗していたが、そのベイリー騎手も「あの馬は強すぎるよ」と、クロフネの驚異的な強さに舌を巻いた。

 クロフネはその後、ドバイやアメリカの世界最高峰のレースへの参戦を予定していたが、屈腱炎を発症。引退を余儀なくされた。

 クロフネが世界を相手にどんな競馬をするのか。それが見られなかったことは、本当に残念でならない。

 さて、もうすぐチャンピオンズC。ダートの頂上決戦を前にすると、3角すぎから馬なりでかわしていったクロフネの雄姿をつい思い出してしまう。あの興奮を味わえる日が、またいつか来ることを心待ちにしたい。

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