2020.11.30

3強が集う最高峰の戦いで見た「現役最強馬」アーモンドアイの完成形

  • 土屋真光●文 text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 たとえ無謀なハイペースでも「この馬を気持ちよく行かせるのは危険だ」ということは、誰もが認識している。そうして、直線を向いてからもリードを保つキセキをいち早く捕らえにいったのは、2~3番手の好位に位置し、アーモンドアイの前でレースを運んでいたグローリーヴェイズ(牡5歳)だった。スタミナ丈夫が、先手を取ってアーモンドアイを封じにかかったのだ。

 一方で、アーモンドアイを見る形で追走していた同厩舎のカレンブーケドール(牝4歳)は、4コーナー手前から外目を進出。勢いをつけて、アーモンドアイのギアが上がる前に同馬を飲み込む算段だった。

 しかし、そうした脇役たちの"仕掛け"にも何ら慌てることなく、アーモンドアイは直線に入って、涼しげに抜け出してきた。周囲の騎手たちが懸命に追うのとは対照的に、鞍上のクリストフ・ルメール騎手の手は軽く促す程度。残り200mで一発ムチが入ってからは、完全に脚色が違った。

 その間、ライバルとなるデアリングタクトはコントレイルに行き場を奪われて、進路を内側にとって猛追。グローリーヴェイズ、カレンブーケドールとの3着争いを制するのが精いっぱいだった。デアリングタクトを封じたコントレイルは大外から強襲。4頭横一線の中からクビひとつ抜け出すが、アーモンドアイには並ぶこともできなかった。

 結局、そんな2着争いを尻目に、アーモンドアイは悠々とゴール。中3週の不安などどこ吹く風。むしろ、これこそがアーモンドアイの完成形か、と思わせる走りを見せて、GI最多勝記録を「9」に伸ばした。

 アーモンドアイにとって、前走のGI天皇賞・秋の勝利は"苦しみから抜け出す勝利"だった。最強の座から一度ならず二度も引きずり降ろされた彼女が、今一度、最強であることを証明したのだ。それゆえ、ルメール騎手はレース後に涙を浮かべた。

 だが、この日の勝利はそれとは対照的だった。さまざまな重圧から解放され、人馬ともに"ハッピー"な気持ちで競馬を楽しんでいた。それが、そのまま結果にも表れていたし、レース後のルメール騎手の表情からもにじみ出ていた。