アーモンドアイが偉業を達成。見たいのは無敗の三冠馬たちとの対決だ (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 レース前、一番の課題とされたのは、スタートだった。前走のGI安田記念では、出遅れて位置取りが悪くなり、先にスパートした勝ち馬グランアレグリアを最後まで捉えられなかったからだ。

 それは、彼女自身の競走馬としての"衰え"ともリンクして捉えられ、天皇賞・秋でも同じようなことが起こるのではないか、と懸念されていた。

 だが、アーモンドアイはゲートが開くや、抜群の反応を見せて、前から3、4番手という絶好の位置をキープした。そのスタートと、直後の道中の位置取りを見て、早くも「(アーモンドアイの)勝利を確信した」という人も少なくなかったのではないか。

 ただ、その道中は余りにも平穏すぎた。こういう時は何かが起こる......。

 直線を向いて、他の馬の騎手たちは手綱を激しく動かしていた。にもかかわらず、ルメール騎手は手綱を持ったまま。泰然と構えて、追い出すタイミングを待っていた。

 直線の坂を越えた辺りで、逃げるダノンプレミアムをとらえにかかる。ここでも、さしたる労力を必要とせず、あっさりとかわした。もはや勝利は目前だったが、その刹那、ルメール騎手は肝を冷やすことになる。

 残り200mを切って、あっけなく前を捕まえたため、アーモンドアイの気持ちにも隙のようなものが生まれたのかもしれない。そこに、後方に待機していたフィエールマンとクロノジェネシスが猛然と襲い掛かってきたのだ。

 これには、ルメール騎手も正直に「怖かった」と話している。

 フィエールマンが使った終(しま)いの脚は、上がり32秒7。クロノジェネシスのそれは、32秒8。2頭の、アーモンドアイを追い詰めた脚は、凄まじいものだった。

 並みのGI馬であったなら、おそらくかわされていたかもしれない。だが、それを凌ぐのが、スーパーホースである。

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