GIシーズンになると思い出す、哀感の「シルバーコレクター」たち (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 泥んこに近い馬場状態のなか、レースはホットシークレットが大逃げ。武豊騎手騎乗のステイゴールドは、中団馬群に待機していた。直線を迎えて、馬群が一気に凝縮すると、ステイゴールドはその間を縫うようにして抜け出し、残り200mで先頭へ。最後は、追いすがるマチカネキンノホシを1馬身4分の1振り切ってゴール板を通過した。

 実に2年8カ月ぶりの勝利。しかも、念願の重賞初制覇である。

 調教師をはじめ、スタッフみんなが泣いた。スタンドからも大きな拍手が沸き起こった。翌日のスポーツ新聞には「GI並みの拍手だった」と記されていた。

 ステイゴールドは、その後もしばらく勝てない時期が続いたが、翌年、年明けのGII日経新春杯(京都・芝2400m)を勝って重賞2勝目。続くドバイ遠征で、当時世界ナンバー1だったファンタスティックライトを破って、海外のGIIレースで勝利を収めた。そしてその年末、香港に遠征してGI香港ヴァーズ(芝2400m)を快勝。ついにGI馬の仲間入りを果たし、現役生活を終えた。

 国内では届かなったGIの栄冠。だが、より強豪ぞろいの海外でGI勝ち。ステイゴールドは、最後まで"人間の物差し"が通用しない馬だった。

 記録と言えば、シーキングザダイヤを思い出す。

 早々に重賞タイトルを手にして、3歳秋には海外遠征に挑んだ。そこでは振るわなかったものの、帰国後はダートを主戦場として活躍した。しかし、中央、地方交流を含めてGI戦では1勝もできず、2着9回という"怪記録"を樹立した。

 これは、GI未勝利馬の2着記録としては、国内最多だという。文字どおりの「シルバーコレクター」だ。

 得意戦法は、好位2、3番手からの押し切り。ただこの戦法では、GIを勝ち切れなかった。ゴール前のひと伸びと、その"ひと伸び"を可能にする勝負根性が、いつも足りなかった。

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