凱旋門賞で日本のディアドラに騎乗する
名ジョッキーの男気に感謝

  • 土屋真光●文・撮影 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 約2カ月ぶりにレースに臨むディアドラは、実際には体重は増えていないはずなのに、ナッソーSの時よりも姿が大きく見えた。

「やっぱりそう思います? ナッソーSの時より全然いいですよね」

 調教助手の込山雄太は笑顔でそう答えた。前走の直前は「悪くはないんだけど、なんかね......」と口にしていただけに、今回は不安な点が解消されたことが伝わってくる。

凱旋門賞の勝利を願うファンのメッセージが入った国旗を掲げるディアドラ陣営凱旋門賞の勝利を願うファンのメッセージが入った国旗を掲げるディアドラ陣営 さらに、スペンサー騎手の"男気"にも触れておきたい。

 今回はディアドラの主戦騎手が、契約の関係で騎乗について即答できない状況が続いていた。そこで、騎手の確保が困難になるリスクを避けるため、陣営がイギリス遠征当初から候補に挙がっていたスペンサー騎手に騎乗を打診することになった。

 イギリス政府はフランスからの入国に関し、騎手を含めたエリートアスリートに対して7日間(一般人は14日間)の自主隔離を義務づけていた。凱旋門賞でディアドラに乗れば、帰国後に隔離しなくてはならなかった(現在は、移動の際に市民と接触がなく、且つ日帰りであればエリートアスリートは検疫を免除される)が、スペンサー騎手は「検疫があろうと必ず行く」と心意気を見せた。

 調教助手の橋田宜長も「そこまで言ってくれたことが、どれだけ心強かったか」と振り返った。スペンサー騎手の熱い思いはどこからくるものなのか。追い切り後に尋ねると、次のように話してくれた。

「凱旋門賞に挑戦できることは何より嬉しい。しかも、これだけの馬なら断る理由はないよ。みんなにとってハッピーな結果にしたいね」
 
 自身にとっては16年ぶりの凱旋門賞。意気込み溢れるスペンサー騎手の騎乗にも注目だ。

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