「5億越え」も出たセレクトセール。
新世代の種牡馬たちは明暗くっきり

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu

 今年に産駒がデビューした種牡馬では、ドゥラメンテが2日間で3頭の億超えホースを出したのに対し、モーリスが2日間で3900万円が最高落札額と明暗を分けた。しかし、前出とは別の調教師は「期待度が高かったわりに、ここまでの2歳戦の成績が今ひとつなのでモーリス産駒は評価を落としていますが、父譲りであるなら本格化は古馬になってから。何年か後には、『2020年はお買い得だった』という評価になるかも」と、今後に評価が上がる可能性を示唆した。

 ここまで高額取引馬の話題が続いたが、今年は「サトノ」の冠名でお馴染みの里見治氏(名義は「(株)サトミホースカンパニー」)が超高額馬の購買を見送った。2日間を通しても、「エリドゥバビロンの2020(父サトノダイヤモンド)」の8000万円が最高額だった。

 全体を通しても、昨年や一昨年であれば、もうひと声で1000万円台の数字がひとつ増えていたのでは......という入札が多い印象を受けた。長年、このセレクトセールで存在感を示してきた「アドマイヤ」の近藤利一氏の逝去も、少なからず落札総額に影響を与えたのかもしれない。あらためて、近藤氏の貢献度の大きさを実感した。

 2日間を終え、社台ファームの代表で、このセールの市場長でもある吉田照哉氏は次のように総括した。

「超高額馬が出にくくなっている時代が来たようにも感じますけど、良血馬の母馬から生まれて、馬体のいい馬には高い値がついていますね。繁殖牝馬や兄弟がGI馬など、繁殖牝馬のレベルが上がっていますし、そうしたセリは世界を見渡してもそうないでしょう。

 繁殖牝馬に投資した結果が出ていると思います。今までは『ディープのいい馬ならクラシックで勝負になる』といった声もありましたが、これからはどういった馬が主役になるかわからない時代になる。いずれにせよ、このセールから強い馬が出てくるということに関しては、今後も変わらないと思います」

 厳しい状況の中で、大成功に終わった今年のセレクトセール。JRAの売り上げも伸びているように、競馬業界はまだまだ活気に溢れている。ディープ、キンカメの2大看板が不在となった「令和のセレクトセール」がどう変わっていくのか。購買された若駒たちがどのような未来を紡ぐのか。その成り行きを見守りたい。

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