「5億越え」も出たセレクトセール。新世代の種牡馬たちは明暗くっきり (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu

 そうした流れの中、セレクトセールはしっかりと対策を講じて開催に漕ぎつけた。会場であるノーザンホースパークをセレクトセールのために貸し切り、来場者は事前に登録した購買者とその同伴者に限定。メディアもオフィシャルを除いては1社につき1名とし、すべての人物に入場の際の手指消毒と検温を義務づけ、場内ではマスク着用の徹底を呼びかけた。

 当日は、入場口に検温用の小屋が設けられ、サーモグラフィーと非接触型体温計の二段構えでチェックを受けることが義務づけられた。ここで37.5度以上が計測された場合、入場は認められない(今回、入場できなかった人は出なかった)。さらに、入場後に体調を崩す人が出ることも想定し、場内には医師と看護師を待機させていたという。

入場口に設けられた検温用の小屋(C)Japan Racing Horse Association入場口に設けられた検温用の小屋(C)Japan Racing Horse Association セリ場の座席は間隔が空けられ、屋外の来場者用テント席もひとテーブルあたりの座席数を削減。そこかしこにアルコール除菌スプレーが置かれ、人が手を触れそうな場所はスタッフがこまめに清掃していた。また、来場を避けた購買者のため、会場内に入札用の臨時コールセンターが設けられるなどの対策が取られ、実際に落札に至ったケースも見られた。 

 セリの1日目終了後、ノーザンファームの代表であり、日本競走馬協会理事でもある吉田勝己氏は「こうした状況下で、実際に馬を見てもらい納得して買ってもらうために、どうしたらいいかを考えました。よく間に合ったと思います」と振り返った。こうした徹底ぶりに、セレクトセールが世界に誇るセリ市となった理由の一端を見た気がした。

 セールそのものは、コロナ禍の状況であることを考えれば驚くべき活況に終わった。総額や平均価格は久しぶりに前年割れとなったが、2日間を通しての落札率は90%超え。総落札額も187億を超えて、昨年に次ぐ史上2位の数字となった。

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