NHKマイルC、伏兵ラウダシオンを勝利に導いたジョッキーの「選択」 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Kyodo News

 おそらく、誰かが競り合っていかねば、悠々と逃げ切られてしまうだろう。だが、いまだ成長過程にある3歳馬の戦い。しかも、大半の馬がマイルまでの距離しか経験していない。もしその役目を担うことになれば、その時点で自らの勝利は、放棄することになるかもしれない。

 まして、ある程度控える競馬で結果を残してきた他の人気馬が、あえてそうしたリスクを負うことはない。

 さまざまな思惑が交錯するなか、未知数な距離について、恐れることよりも、信じることを選択したのが、ラウダシオン(牡3歳)の手綱を取ったミルコ・デムーロ騎手だった。

本命レシステンシアを退けて勝利を飾ったラウダシオン本命レシステンシアを退けて勝利を飾ったラウダシオン ラウダシオンの戦績は6戦3勝。芝1400mのオープン特別を2勝しているほか、前走のGIIIファルコンS(3月14日/中京・芝1400m)でも2着と健闘しているが、唯一経験しているマイル戦、GI朝日杯フューチュリティS(12月15日/阪神・芝1600m)では、勝ち馬から1秒差をつけられての8着と完敗を喫した。厩舎サイドは、こうした戦績から「ベストは1400m」と判断していたようだ。

 しかし、昨年もこのレースを勝っている鞍上は、そうとは決めてつけていなかったのだ。

 スタート直後、すんなりとゲートを出たレシステンシアは、馬なりで先頭に立った。片や、ラウダシオンはゲートの出はそれほどよくなかった。それでも、二の脚は速く、最初の200mに差し掛かったあたりで、レシステンシアの外に並びかけていった。

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