春の実績馬が不在のセントライト記念。狙いは人気薄の夏の上がり馬 (2ページ目)

  • 大西直宏●解説 analysis by Onishi Naohiro

 その結果、レースを制してダービーの出走権を手にしたザダルですが、レース後の体調や、ダービーに出走した場合のその後の影響を考えて、断腸の思いでダービー出走回避を決めたそうです。同馬を管理する大竹正博厩舎のスタッフをはじめ、オーナーや牧場関係者にとっても、難しい決断だったと思います。そういう意味でも、最後の一冠にかける意気込みはかなり強いのではないでしょうか。

 セントライト記念の舞台となる中山・芝2200mは、外回りの難しいコースです。人馬ともに得手不得手が出やすいのですが、ザダルは中山で2勝していますし、これまでのレースぶりを見ても、しっかり対応できると思います。

 鞍上を務める石橋脩騎手も、信頼できる関東のトップジョッキーです。今年の1月に同じ舞台で行なわれたGIIアメリカジョッキークラブCでも、シャケトラに騎乗して鮮やかな勝利を決めました。

 個人的にもう1点、ザダルを気に入っている点があります。それは、常に人気がないことです。デビューからの3連勝は、すべて5番人気以下でした。

 たとえば、同馬がディープインパクト産駒であったり、ノーザンファームの生産馬であったり、クリストフ・ルメール騎手が手綱を取ったりしていれば、人気になっていたかもしれません。しかし、大牧場の生産馬ではなく、トーセンラー産駒という渋さもあって、レースでは常に伏兵扱い。それでいて、負けなしの3連勝。その強さには、何か引きつけられるものを感じます。

 ダービー出走馬の中では、リオンリオン(牡3歳)が気になる存在です。先週の中山・芝レースを見る限り、軽視はできませんね。

 というのも、同コースで行なわれたレースはとにかく時計が速く、開幕週の重賞・GIII京成杯オータムハンデも、横山典弘騎手が騎乗したトロワゼトワルがレコードによる逃げ切り勝ちを収めました。

 このレースを見届けた瞬間、「次週も、リオンリオンの横山典騎手で......」という考えが頭をよぎりました。横山典騎手の息子である横山武史騎手が手綱を取ったダービーでは、行きすぎてバテてしまいましたが、鞍上が主戦ジョッキーに戻れば、ダービートライアルのGII青葉賞(4月27日/東京・芝2400m)を勝ったときのような、絶妙なペースでの逃げも見られるのではないでしょうか。

 中山・芝2200mを走ったことがあるのも強みですし、今回人気を分けそうなランフォザローゼス(牡3歳)には青葉賞で、ルヴォルグ(牡3歳)には大寒桜賞(3月24日/中京・芝2200m)でいずれも勝っています。菊花賞出走へ賞金は足りているので、100%の仕上げではないと思いますが、今の馬場を味方にすれば、押し切るチャンスはありそうですよ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る