「ゾーンに入った」藤田菜七子。
夏競馬でどえらい成績をあげている

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 8月24日、25日の両日、札幌競馬場で開催されたワールドオールスタージョッキーズに藤田菜七子が出場した。今年はほかにも、藤田が「目標」と語るニュージーランドのリサ・オールプレス、フランスのミカエル・ミシェルと、3人の女性騎手が初めて同時に選出された。藤田は、4戦を戦ってのポイントランキングで14人中13位タイに終わったものの、日本の女性騎手として初めての大舞台で堂々の騎乗を披露。また、25日に同競馬場で行なわれた第4レース(3歳未勝利)で勝利し、結果でも存在感を示した。

 藤田がワールドオールスタージョッキーズに選出された理由は、「顕著な活躍」が認められたことによるもの。同じ理由では武豊、的場文男といった、中央と地方のリビングレジェンドが選出された。主催であるJRAには、もちろん興業面での効果を狙った向きもあろう。しかし、"女性騎手"というだけで、限られた席を与えたわけではない。しっかり結果を残し、自分で掴み取ったものである。

 JRA唯一の女性騎手ということもあり、デビューから4年目を迎えた今年も、当初はまだ話題が先行する傾向があった。2月にGIフェブラリーステークス(東京・ダート1600m)でコパノキッキング(せん4歳)に騎乗した際も、同馬は前哨戦を勝利した有力馬ではあったが、実力で勝ち取ったというより、オーナーによるタニマチ的な意気や、なにより話題性もあっての騎乗オファーだった部分も否めない。

 それは、常に「女性騎手としてではなく、ひとりの騎手として見られたい」と語っていた本人としても不本意ではあっただろう。この流れを変えるためには、成績・実績を積み重ねることが必要だった。

 そんななか、現地時間6月30日にスウェーデンのブローパーク競馬場で行なわれた、女性騎手の招待競走ウィメンジョッキーズワールドカップで、藤田は大仕事をやってのけた。

 地元スウェーデンを含む8カ国10人の騎手による、計5戦の総合ポイントで争われたこの大会の出場騎手の中には、ブラジルのGⅠジョッキーや、地元のクラシック勝利ジョッキーなど、実力で話題を獲得してきた猛者がずらり。それでも藤田は、第2戦で海外初勝利を飾ると、最終の第5戦も勝利して見事に総合優勝。ワールドカップの名に準じるのであれば、今年の"女性騎手の世界チャンピオン"になったのである。

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