GI馬4頭出走の札幌記念で、
ダービー馬ワグネリアンの復活はあるか

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 はたして、その可能性はあるのか。

「十分にあります。前走の大阪杯にしたって、本当は勝っていたレースですから」

 そう断言するのは、関西競馬専門紙のトラックマンだ。

 実はあの大阪杯、スタート後の1コーナーで馬群がギュッと固まって、最内にいたワグネリアンは、進路が塞がれたような形になり、ポジションを下げるはめになった。その不利が「最後まで響いた」とトラックマンは言う。

「勝った馬との着差がクビ、クビとわずかだっただけに、あそこがスムーズだったら、勝つか、少なくとも、もっと際どい勝負に持ち込めていたと思います。その意味で、あの3着はワグネリアンの能力の高さを再認識した3着でした」

 このトラックマンによれば、ワグネリアンの一番の長所は「頭のいいところ」だと言う。オンとオフ、つまり、がんばるべき時とそうじゃない時がわかっていて、それをしっかりと使い分けることができるところだそうだ。

 ただその長所は、3歳の時点では体調にバラつきがあったため、思うようには生かせなかった。

 皐月賞の7着という成績も、ダービーを最大目標として「二兎を追わない」と決めたからで、皐月賞でも勝ち負けになるくらいがんばっていたら、ダービーの勝利はなかったという。

 そして、その"体調が安定しない"という状態は、ダービー後、休養を挟んだ秋になっても解消しなかった。神戸新聞杯は勝ったものの、不安定な状態に変わりはなかったそうだ。

 そこで、使おうと思えば使えた天皇賞・秋もパス。ワグネリアンを管理する友道康夫調教師が、「今は無理をする時期ではない」と判断して長期休養に入った。

「ワグネリアンにとっては、この休養がよかったようです」とトラックマン。続けて、「グンと成長して厩舎に帰ってきましたからね」と語る。

 その成長の証は、何より馬体と馬体重のアップである。

 前走の大阪杯は、神戸新聞杯からはプラス8kgだったが、ダービー時からはおよそ20㎏も増えている。しかも、その後も馬体は成長を続けているという。

 F1で言えば、ようやくエンジンに見合うシャシーが出来つつある、といった感じか。

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