ダービーの重圧ハンパなし。
優勝経験あるジョッキー騎乗の馬が有利だ

  • 大西直宏●解説 analysis by Onishi Naohiro

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 今週は、いよいよ「競馬の祭典」と言われる日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)です。

 毎年、7000頭以上生産されるサラブレッドの頂点を決める大一番。今や、国内GIも増えて、海外GIに遠征するのも当たり前という時代になりましたが、それでもやはり、騎手、調教師、生産者、馬主、そして厩舎スタッフも含めた、すべてのホースマンの"夢"と言えるレースです。

 まさに出走するだけでも大変なダービー。当日は他のGI、たとえば有馬記念やジャパンカップといったビッグレースでも感じられない、独特の雰囲気に包まれます。何か「いよいよ今日、今年のダービー馬が決まるな......」ということをみんなが意識していて、その可能性がある有力馬の関係者はより緊張した空気を醸し出し、その緊張感が周囲にも伝わっていく――そんな重々しいムードとなります。

 そのため、キャリアの浅い若手騎手などは、その雰囲気にのまれてしまって「自分の競馬がまったくできなかった」ということは、毎年のようにあります。

 よく知られた例を挙げれば、1998年にキングヘイローの手綱を取った福永祐一騎手。ダービー初騎乗で2番人気の鞍上を務め、当然"勝ち負け"を意識したでしょうから、相当舞い上がっていたと思います。

 馬はとても敏感な生き物で、そうした跨(またが)る者の緊張感なども感じ取ります。つまり、ヤネ(乗り役)が過度の重圧を感じていると、それが馬に伝わり、自分の競馬ができなくなってしまう場合もあります。結果、キングヘイローは14着と惨敗を喫しました。

 その福永騎手も昨年、ワグネリアンでついにダービー制覇。過去の雪辱もようやく果たせたのではないでしょうか。

 要するに、日本ダービーという舞台では、その独特の雰囲気にのまれないほど、何度も悔しい経験をしている場数を踏んだベテランか、すでにダービーを勝っていて気持ちに余裕がある者か、そういうジョッキーであれば、異様なムードにものまれず、普段どおりのレースができるのだと思います。

 そんなジョッキーの精神面の差が勝負を分けた一戦と言えば、最近では2013年と2014年のダービーでしょうか。2013年は、それまでにダービー4勝を挙げていた武豊騎手騎乗のキズナが、ダービー未勝利の福永騎手騎乗のエピファネイアをゴール前で差し切り勝ち。2014年は、2009年にロジユニヴァースでダービーを勝っている横山典弘騎手騎乗のワンアンドオンリーが、ダービー未勝利の蛯名正義騎手騎乗のイスラボニータとの競り合いを制しました。

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