屈指の切れ者シゲルピンクダイヤ。名物オーナーに破格の夢を届けるか

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

2019年クラシック候補たち
第14回:シゲルピンクダイヤ

 競馬界には"名物オーナー"と称される馬主が数多くいるが、馬名に「シゲル」が入ることでお馴染みの森中蕃(もりなか・しげる)氏もそのひとり。毎年、冠名「シゲル」のあとに、魚や野菜、星座など、ある一定のテーマを設けて馬名をつけている。

 また、森中氏は、あまり高額ではない馬を多数所有することでも有名。そのため、大舞台での勝利は決して多くはない。だが、今春のクラシック戦線においては、この「シゲル軍団」の中から、タイトル奪取を狙える馬が登場した。

 栗東トレセン(滋賀県)の渡辺薫彦厩舎に所属するシゲルピンクダイヤ(牝3歳/父ダイワメジャー)である。

オークスでの戴冠を狙うシゲルピンクダイヤオークスでの戴冠を狙うシゲルピンクダイヤ 冠名のあとに、宝石の名がつけられた「シゲル軍団」の3歳世代。シンゲルピンクダイヤは、昨秋の2歳新馬でデビュー(10月13日/京都・芝1600m)した。

 同レースでは、3~4コーナーの勝負どころで馬群に揉(も)まれ、大きくポジションを下げてしまった。その結果、3着に終わったものの、直線ではすばらしい末脚を披露。素質の片鱗を見せ、その後に希望を与える初陣となった。

 実際、続く2歳未勝利(11月3日/京都・芝1600m)では、中団から鋭く伸びて快勝。この2戦の内容から、稀有(けう)な末脚の持ち主であることを存分に示した。

 ところがその後、右前脚の繋靱帯(けいじんたい)炎を発症。4カ月の休養を余儀なくされてしまう。

 そこから、復帰を果たしたのは、GI桜花賞トライアルのGIIチューリップ賞(3月2日/阪神・芝1600m)。一頓挫あって、持ち前の切れ味に支障は出ないのか、不安を抱えてのレースだった。

 しかし、厳しい戦いが予想されるなか、シゲルピンクダイヤはあらためて力のあるところを見せつけた。スタートでやや遅れて最後方からの競馬になったものの、直線に入ると大外から強襲。2歳女王ダノンファンタジーには及ばなかったものの、粒ぞろいのメンバー相手に2着を確保し、大舞台へと駒を進めた。

 そして、迎えた桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)。またもスタートでは出遅れるも、道中はじっくりと後方に待機。直線を向くと進路をインコースに切り替えて、猛然と馬群を割っていった。

 内側からグイグイと伸びてきたシゲルピンクダイヤ。結局、勝ったグランアレグリアには及ばなかったものの、1番人気ダノンファンタジーや3番人気クロノジェネシスらには先着。メンバー最速の32秒7という上がりをマークして、GIの大舞台で堂々の2着となったのだ。

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