高額馬がいよいよ本領発揮か。
「変則二冠」に挑むダノンチェイサー

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

2019年クラシック候補たち
第13回:ダノンチェイサー

 3歳牡馬クラシックにおける「春の二冠」とは、GI皐月賞(中山・芝2000m)と、GI日本ダービー(東京・芝2400m)のことを指す。その世代のトップクラスにある馬の大半は、この王道路線を目標とするが、なかには別の臨戦過程で世代の頂点を目指す馬がいる。

 5月初旬のGI NHKマイルC(東京・芝1600m)を経て、日本ダービーに向かうパターンもそのひとつだ。「変則二冠」と言われ、2004年にはキングカメハメハが両レースを制する快挙を達成した。

 今年も、このローテーションを選択した実力馬がいる。栗東トレセン(滋賀県)の池江泰寿厩舎に所属するダノンチェイサー(牡3歳/父ディープインパクト)である。

「変則二冠」に挑むダノンチェイサー「変則二冠」に挑むダノンチェイサー 昨年7月にデビューした同馬は、初陣で4着に敗れたものの、2戦目の2歳未勝利(8月18日/小倉・芝1800m)できっちり勝利を挙げた。

 休養を挟んだあと、3戦目に選んだのは500万下のきんもくせい特別(11月4日/福島・芝1800m)。ここでは先行して、直線に入って早めに抜け出すも、ゴール直前で他馬の強襲に屈してハナ差の2着に敗れた。

 しかし、続く500万下のこうやまき賞(12月1日/中京・芝1600m)では、道中5番手から直線の競り合いを制して、アマタ差の勝利。2勝目を挙げた。

 そしてその後、GIIIきさらぎ賞(2月3日/京都・芝1800m)に挑んだ。ここでも好スタートから2番手の好位置につけると、直線に入ってから鋭く反応。逃げ馬を難なくとらえると、そのまま突き抜けて、後続に2馬身差をつける完勝劇を披露した。

 先行抜け出しのスタイルで、安定したレースぶりを見せてきたダノンチェイサー。きさらぎ賞のあと、陣営がこの春は「変則二冠」のローテーションでいくことを早々に表明した。そうしてこれまでの間、4月の皐月賞をパスして、じっくりと調整を重ねてきた。

 おかげで、この期間にダノンチェイサーはさらなるレベルアップが図れたようだ。関西競馬専門紙記者がその様子を伝える。

「体つきが成長し、厩舎のスタッフによれば『背中や腰がしっかりしてきた』とのこと。今までは背腰が弱かったため、口元のハミに体重を預けて走るようなところがあって、その分、レース中は前のめりでかかりやすかったそうです。しかし、その点も解消されて『レースはしやすくなっている』とスタッフは好感触を得ていました」

 NHKマイルCのあと、2400m戦のダービーに臨むにあたって、折り合い面に進歩が見られるのは、好材料だろう。

 何にしても、ダノンチェイサーはもともとレース運びに優れたタイプ。春の舞台において、「その点は大きな武器になる」と、先述のトラックマンも語る。

「ダノンチェイサーは、末脚や爆発力に秀でたタイプではないのですが、立ち回りのうまさはいいモノを持っています。NHKマイルCもそうですが、とくにダービーでは立ち回りひとつによって、勝敗を分けることが多々あります。そこに強みがあるのは、魅力ですよね」

 そもそも「セレクトセール」で2億5000万円(税別)の高値で取引された素質馬ダノンチェイサー。その高値に見合った成長を遂げた今、レース巧者という持ち味を生かしてタイトル奪取を果たせるか。果敢なチャレンジの行方をじっくり見守りたい。

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