昨秋の菊花賞「再戦」ムードの天皇賞・春。
穴馬は持久力勝負の王子様だ

  • 大西直宏●解説 analysis by Onishi Naohiro

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 同じく春に行なわれる古馬中距離路線の大阪杯(阪神・芝2000m)がGIに昇格して3年目。やはりその影響もあるのでしょう、昨年もそうでしたが、今年のGI天皇賞・春(4月28日/京都・芝3200m)も、GI馬の出走は1頭のみと、やや寂しいものになってしまいました。

 それでも、唯一のGI馬、昨秋のGI菊花賞(京都・芝3000m)を制したフィエールマン(牡4歳)をはじめ、同レースの上位陣がこぞって出走。加えて、長距離戦で実績を挙げている面々がそろって、レース自体は見応えのあるものになりそうです。

 まず注目されるのは、その昨秋の菊花賞で上位に名を連ねた馬たちです。

 前述のとおり、勝ち馬はフィエールマン。菊花賞では、夏のGIIIラジオNIKKEI賞(2着。福島・芝1800m)からという、過去に例のない臨戦過程で勝利を挙げました。

 昨春の桜花賞を制したアーモンドアイをはじめ、先の桜花賞を快勝したグランアレグリアや皐月賞を勝ったサートゥルナーリアなど、最近は長期休養明けのぶっつけ本番でも好結果を出す馬が増えています。トレセンのみならず、放牧先での調教技術がそれだけ進歩している、ということなのでしょう。

 ただ、馬券検討においては、さすがに難儀です。前哨戦など直前のレースを使ってくれないと、どの程度成長しているのか、そこでの仕上がり具合と本番へ向けての上積みはどうなのか、あるいはマイナス要素はあるのか、さらには他馬との力関係はどうかなど、そうしたことがまったく読めず、レースを予想するうえでの材料が少なくなってしまいますからね。

 それはさておき、菊花賞後のフィエールマンの臨戦過程については、やや解せないところがあります。

 同馬は、もともと競馬にいけば一生懸命走るタイプ。その分、レースを使ったら、疲れを取るまでには時間がかかる馬だと見ています。ですから、休み明けのGI、それも3000m戦を目いっぱい走ったとなれば、それなりに疲れがあったはずで、その疲れを癒すとなれば、これまで以上に休養を取ると思っていました。

 ところが、年明けすぐのアメリカジョッキークラブC(1月20日/中山・芝2200m)から始動しました。3月末のドバイ遠征を視野に入れてのことだったようですが、これまで前哨戦を使ってこなかったこの馬のことを考えれば、菊花賞から直行でもよかったはず。そこが、少々腑に落ちないんですよね。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る