サートゥルナーリアは本当に一強か。ぶっつけの皐月賞に隠された不安 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 それを裏付けるように、近年では牡馬路線でも、前哨戦となるGII弥生賞(中山・芝2000m)、GIIスプリングS(中山・芝1800m)を使って皐月賞へという、いわゆる"王道のローテーション"が大きく崩れつつある。この点に関して、先述の専門紙記者はこう説明する。

「"王道ローテ"の崩壊は、今年がいい例です。弥生賞(3月3日)、スプリングS(3月17日)はともに、出走メンバーのレベルがあまり高くありませんでした。『春はもっと余裕を持ったローテーションで戦いたい』という考えが、有力馬の陣営にあって、実際に調教技術の進歩がそれを可能にしています。今はむしろ、牡馬なら2月中旬に行なわれるGIII共同通信杯(東京・芝1800m)から皐月賞へ、というのが『いい』と考える調教師が増えつつあるようです」

 以前には、厳然してあった"王道ローテ"が崩壊。それが、今の競馬だという。ならば、昨年の暮れ以来のぶっつけも、以前ほど"非常識"ではないのかもしれない。

 そうは言っても、体調面より、レース勘という意味で、年明けにまったくレースを使わないよりは、皐月賞の前に何かしらレースを使ったほうがいいのは明らか。だからこそ、過去78回を数える皐月賞の歴史の中でも、年明け初戦でこのレースを勝った馬は1頭もいないのだ。

 そうした事実があっても、サートゥルナーリアはホープフルSで中山を、同時に関西からの長距離輸送も経験したことで、陣営は「これ以上の経験は必要ない」として、ぶっつけのローテーションを選んだとされる。

 だが、本音はどうだろうか。「おそらく......」と前置きしたうえで、先の専門紙記者がこんな裏事情を明かしてくれた。

「一昨年は、レイデオロが皐月賞5着からダービーを制覇。昨年はワグネリアンが皐月賞7着からダービーを勝ちました。近年、皐月賞の価値が低下していて、何が何でも勝たなければいけないレースではなくなっているんですね。それで、昨年も、一昨年も、そもそもダービーを狙っていた馬が、皐月賞をトライアルのように使って、まんまと結果を出しました。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る