安藤勝己の「3歳牝馬番付」。桜花賞、オークスで勝てる馬を決めた (5ページ目)

  • 新山藍朗●取材・構成 text by Niiyama Airo
  • photo by Yasuo Ito/AFLO

前頭筆頭:シェーングランツ(牝3歳)
(父ディープインパクト/戦績:5戦2勝、着外3回)

 デビュー前から、オークス馬ソウルスターリングの妹として注目を浴びていた同馬。そのわりには、ここまでの戦績はパッとしない。未勝利戦を勝ち上がって、連勝で重賞を制するまではよかったけれども、相手が強化された阪神JFで4着、チューリップ賞でも5着と今ひとつ振るわない。

 実は勝った重賞、GIIIアルテミスS(10月27日/東京・芝1600m)もそれほど強い競馬とは感じなかった。原因は、すべて馬体にある。いかにも緩い。要は、素質だけで走っているようなものだ。

 それでも重賞を勝てるのは、そもそもの能力がいかに高いか、ということ。おそらく馬体がしっかりして、競走馬として完成されるのは、もっと先だと思う。

 だとしても、桜花賞はともかく、オークスでは面白い存在になってきそうな気がする。なぜなら、こういうタイプには東京のような広々とした馬場が合うからだ。しかも、ある程度距離があったほうがいい。すなわち、オークス向き、ということだ。

 ディープの子だが、瞬発力というタイプではないから、ディープ産駒っぽくなくて、フランケル産駒のお姉さんともタイプが違う。何にしても、飛びが大きいから、広いコースで、自分のリズムで気持ちよく走ったら、どこまでも伸びていきそうな感じがする。

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 この他、有力どころを挙げるとすれば、強い相手と戦って、常に善戦しているビーチサンバ(牝3歳/父クロフネ)や、前走のGIIIフラワーC(3月16日/中山・芝1800m)で、逃げて強い競馬を見せたコントラチェック(牝3歳/父ディープインパクト)らの名前が浮かび上がる。

 ただ今回は、あくまでもクラシックを"勝つ馬"という視点を重視して評価した。その点でビーチサンバは、掲示板はあっても、勝つまでの可能性は感じられなかった。一方のコントラチェックも、"オークス直行"という選択がどうなのか。GI NHKマイルC(5月5日/東京・芝1600m)なら、勝ち負けに十分加われると思うが、オークスは同馬にはいかにも距離が長い、という印象がある。

 したがって、桜花賞、オークスを含めて現時点で有力なのは、番付に名前を挙げた5頭。ここから、勝ち馬が出ると思う。

 3歳牝馬の全体的な評価としては、桜花賞でのグランアレグリアのレースぶりにかかってくるのではないか。久々の競馬で、桜花賞にパッと出てきて楽に勝ってしまうようなら、この世代では同馬が1頭、抜けている可能性が高い。オークスとの二冠も有力だ。

 しかし、桜花賞で負けたり、勝つにしてもギリギリの勝負になったりしたら、今年の3歳牝馬は混戦。オークスは、かなりの激戦が予想される。

安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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