横山ルリカが選んだ、2018年「ベストレース&ベストホース」 (4ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai keijiro

 里見オーナーは懐の深い方なので、笑顔で「考えておきます」と返していだきましたが、お忙しい方なので、どこの誰だかわからないような初対面の私のことなんて覚えてくださっているとは思ってもいませんでした。

 その秋にサトノダイヤモンドが菊花賞を勝ったあと、番組でお祝いに伺った際に、「(サトノ)ノブレスの妹に『ルーリー』と名付けることに決めました」とおっしゃっていただいたんです。サトノダイヤモンドがGIを勝っただけでも大号泣モノだったのに、心臓が止まるくらいびっくりして感激でボロ泣きでした(笑)。

 サトノルーリーは、夜中に馬房の窓からキツネの姿が見えただけでビックリしてご飯を食べられなくなるくらい繊細な子で。それでも育成牧場のノーザンファームの方は、能力は高く、抜群のキレがあると評価してくださっていました。ゲートを出遅れたり、他の馬を怖がったり、競走馬としての課題をひとつずつクリアしながら少しずつ成長していたルーリーちゃんでしたが、とにかく馬体が増えずスタッフの方も試行錯誤されていたと聞いています。

「芝1200mで先行させる」という適性が見つかり、ようやくこれからという頃に3歳未勝利戦が終わってしまいました。未知の能力に賭けて阪神のダート1200m(出走資格を限定した"スーパー未勝利戦")にも出ましたが、それが最後のレース(16着)になりました。

 サトノルーリーは勝つことができないまま引退しましたが、ルーリーちゃんをデビュー戦からずっと追い続けてみて、未勝利を脱することが、いかに難しいことなのかを初めて痛感しました。勝てなかったことは残念でしたけど、競馬に携わる方々の大変さ、GIをはじめ重賞レースに出ている馬のすごさなど、サトノルーリーとの出会いから多くのことを学ぶことができました。ルーリーちゃんが無事に繁殖牝馬になったので、これからも血統のドラマを楽しませてもらえたらなと期待しています。

 これまでも、さまざまなご縁に感謝する場面は多かったですが、トークショーやサトノルーリーの件も、いろんなご縁や出会いがあってのものでした。来年もその先も、ひとつひとつのご縁を大事に競馬と向き合い、楽しみたいと思います。

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