わずか1勝馬が菊花賞で戴冠か。上昇エタリオウ、王になるため大変身 (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 スムーズなスタートを切ったエタリオウは、馬群からポツンと離れた最後方を追走。ゆったりした流れとなり、山内氏は「さすがにここから追い込むのは厳しいかな」と見ていたが、エタリオウはその想像をはるかに超える末脚を使って2着まで追い込んできたのだ。

「戦前から(鞍上の)ミルコ・デムーロ騎手は、次の菊花賞に向けて、こういう競馬をしようと決めていたみたいですね。私としては『よく2着まで来たな』という内容のレースでしたし、本番の菊花賞がかなり面白くなりました」

 同じ2着でも、意味合いは大きく違う。夏場の成長を経て、いよいよ白星をつかむ態勢が整ってきたと言える。現に、山内氏も「菊花賞はチャンス」と力を込める。

「距離は3000mに延長されますが、エタリオウは折り合い面に問題がないですから。それに、スタミナが相当ありそう。実は2戦目の未勝利戦を勝ったときに、『この馬、スタミナがあるな』と思っていて。菊花賞にはかなり向いていると思います」

 山内氏が言う未勝利戦、エタリオウは3コーナー最後方から大外を一気にまくっていくレースを見せた。4コーナーを迎えるときには、早くも先頭に立つ大胆な競馬。直線では外から迫るライバルに一度かわされそうになるが、そこからもう一度グッと伸びて盛り返したのである。

 およそ800m近いスパートだった。そのレースぶりから見てとれるスタミナは、きっと菊花賞で大きな武器になる。加えて、エタリオウは追い込むだけでなく、過去に番手の競馬を見せるなど、自在性もある。3000mという長丁場のレースにおける駆け引きにおいて、これまた有効な材料だ。

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