わずか1勝馬が菊花賞で戴冠か。上昇エタリオウ、王になるため大変身 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 そもそも、なぜ"あと一歩"の2着がこれほど多いのだろうか。

「単純に相手が強かったのもありますし、何よりエタリオウ自身が奥手のタイプで、春は勝ち切るだけの力が付き切っていなかったと思います」

 そう語るのは、エタリオウのデビュー前の育成を手がけ、夏の休養時の調整も担当したノーザンファーム早来(北海道)の厩舎長・山内大輔氏。春はまだ、ひ弱さが見え隠れしており、山内氏は「もうひとつ(上の)力がつけば......」と感じながら、エタリオウのレースを見ていたという。

 エタリオウはもともと、育成時代から成長の早いタイプではなかったそうだ。山内氏が言う。

「育成を始めたときは、こじんまりしていて、目立つタイプではなかったですね。冬毛も出やすく、少しモサッとしているような感じでした。

 ただ、2歳の4月頃からグングン良化しました。馬体が膨らみ、走りも安定して、毛ヅヤもよくなりましたね。育成を終えるときには、『いい体になってきたな』と」

 そうした成長を見て、山内氏はエタリオウの伸びしろの大きさを感じていた。ゆえに、未勝利戦を勝ったあと、2着が続いても「悲観的にはならなかった」と言う。

「育成の後半でグッと成長したとはいえ、先ほども言ったように、この春までは体が未完成な部分が見えていたので、むしろこの馬なりに『よくがんばっているな』と思っていました。毎回きちっと走りますし、一走ごとに成長している様子もうかがえていたので」

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