落札総額は過去最高も、今年のセレクトセールは高額馬戦線に異状あり! (4ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 では、セール全体が熱狂的だったかというと、意外にもそうではなかった。確かに"億超え"の落札馬は1歳で23頭、当歳で16頭とこれも新記録ではあった。ところが、これまで"億超え"の定番だったディープインパクト産駒に、従来のような爆発的な評価が集まらなかったのだ。今年も"億超え"の主力は1歳11頭、当歳5頭のディープインパクト産駒であったものの、当歳馬は昨年の9頭から減少している。

ディープインパクト産駒のリッスンの2017も1億9000万円の値がついたが・・・・・・ディープインパクト産駒のリッスンの2017も1億9000万円の値がついたが・・・・・・ さらに、ジェンティルドンナの姪にあたるドナパフュームの2018(牝0歳)や、ロサギガンティアの姪にあたるトロピカルフロールの2017(牝1歳)などが主取り(ぬしとり:馬に買い手がつかなかったり、価格が生産者の希望価格に達しなかったとき、生産者が値段をつけて引き取っていくこと)となったほか、超良血でこれまでも全兄のロイカバード(牡5歳)やアドマイヤアゼリ(牡4歳)らが2億5000万円以上で取引されていた、アゼリの2017(牡1歳)が1億円からセリをスタートして、1億4000万円で落札されるなど、今ひとつ伸びに欠ける傾向があった。

 この傾向については、セール現場でもたびたび話題に上がっていた。理由として語られたのが、ひとつは「コストパフォーマンス」で、もうひとつが「血の飽和」である。

 前者については、ディープインパクト産駒は確かに「当たり」が出やすいが、2億を超えると簡単には金額に見合った成績が出ない。前出のロイカバードやアドマイヤアゼリなどがその典型だ。とはいえ、血統がよく、ある程度の競走成績が残せれば、種牡馬ないし繁殖牝馬として残して投資を回収することが目論めるのだが、ここで問題となるのが後者だ。

 すでに2代前までにサンデーサイレンスの血を持つ馬だけでも飽和状態で、なかでもディープインパクトの血はより生き残りやすかっただけに、配合にも苦労する状況である。それが今年のセールでも顕在化されてきたということだ。

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