◎か、スパッと切るか。ダノンプレミアムこそ、ダービー最大の悩みだ (2ページ目)

  • 平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki
  • photo by Yamane Eiichi /AFLO

 過去には約7カ月ぶりで1987年GI菊花賞(京都・芝3000m)を勝ったサクラスターオー、1年ぶりで1993年GI有馬記念(中山・芝2500m)を勝ったトウカイテイオーなど、長期休養明けでGIを勝った馬は存在している。クラシックレースでも上記のような例があるので、決して不可能なことではないと思うが、これには馬の距離適性や経験も大きく関係してくる。

 ダノンプレミアムはこれまでの4戦が1600~2000m。デビュー戦の阪神・芝1800m戦、2戦目のGIIIサウジアラビアロイヤルC(東京・芝1600m)では馬なりで2番手を追走し、勝利するというスピード感あふれる走りで完勝している。あの走りを見ると最適条件は1600~2000mで、2400mの距離は長いとみていいだろう。

 血統を見てみよう。父ディープインパクトはダービーを含むクラシック三冠馬で、父としても2012年ディープブリランテ、2013年キズナ、2016年マカヒキと3頭のダービー馬を出している。母インディアナギャルは主にアイルランドで走り、GIIIブルーウィンドS(芝10ハロン=約2000m)、GIIIリッジウッドパールS(芝8F=約1600m)で2着。母の父インティカブは英GIIクイーンアンS(芝8F)の勝ち馬なので、血統的にもマイル~中距離タイプと言えるだろう。前述のフサイチコンコルドが仏ダービー馬カーリアンの産駒で、母の父がスタミナ豊富なサドラーズウェルズという血統の持ち主だっただけに、血統の比較でもやや心許ない。

 サラブレッドはレースに出走することにより経験を積み、強くなるものだ。いくら調教技術が進歩したと言っても、3歳トップクラスの多くが出走する皐月賞やGI NHKマイルCに出走しなかったのは"経験値"という意味でも物足りない。とくにこの時期は急激に成長してくる馬が多いので、完成度が高かったダノンプレミアムと他馬との実力差が大きく縮まっていることも予想される。

 以上のように、過去のデータ、馬のタイプ、血統などから、ダノンプレミアムの日本ダービー制覇の可能性を探ってみたが、筆者の見解として"勝つことは難しい"と言わざるを得ない。個人的な馬券では、ダノンプレミアムが絡む馬券は買わないつもりである。もし勝つようなことがあれば、またひとつの競馬の常識を覆す歴史的名馬の誕生となるだろう。それはまた、すばらしいことなので、その時は自分の見解が外れても、ダノンプレミアムを称えたいと思っている。

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