陣営も色めき立つ。キタノコマンドールも
「世界のキタノ」になるのか

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 大外を押し上げて進出してきたキタノコマンドール。前残りの展開にあって、直線で伸び切れないシーンも想像されたが、そんな心配をよそにライバルたちを難なくかわして、余力十分にゴール板をトップで通過していった。

 上がりタイムは33秒8を計測。後方から長い脚を使いながら、最後の直線でも極上のキレを披露したキタノコマンドールは、この勝利で一躍クラシック候補の仲間入りをしたのである。

 姉には、GIIを2勝し、GIでも2度の2着があるデニムアンドルビーがいる良血。競走馬のセリ市『セレクトセール』において、1億9000万円(税別)で落札された高額馬でもある。以来、名前も含めて話題に事欠かなかったが、いざ戦いの舞台に立ってからも、その走りで注目を集める存在となった。

 とはいえ、実は陣営からしてみれば、決して評価の高い1頭ではなかった。関西競馬専門紙のトラックマンがその真相を明かす。

「キタノコマンドールは、もともと馬体の硬さが目立っていました。ゆえに初戦に臨む際、陣営は半信半疑だったようです。

 2戦目のすみれSのときも同様でした。まだ硬さが抜けず、陣営としては不安を抱えたままレースに送り出していました。おまけに、その一戦ではスローペースの後方に位置していたので、陣営も『さすがにこの展開では厳しい』と思ったみたいですね。

 ところが、その展開をものともせず差し切り勝ち。これを見て、陣営の評価は一変しました。『これならGIでも戦える』という手応えを感じたようです」

 その結果、キタノコマンドールはこのまま皐月賞へと直行することになった。有力馬たちとはまだ直接対決をしていないだけに、本番でどれだけの走りを見せるのか、非常に楽しみだ。

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