フィリーズレビューで思い出す、地方馬ライデンリーダーの「凄い脚」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 インで行き場を失いかけ、激しくもがいていたライデンリーダーを、騎手が直線半ばで大外に持ち出すや、まさに「鬼姫の脚」が炸裂したのだ。

「外からライデンリーダー、すごい脚!」

 実況アナウンサーのその絶叫をまるでBGMにでもするかのように、本当に一気に、矢のように伸びた。

 終わってみれば、2着に3馬身半差の完勝だ。

「交流元年」を飾るにふさわしい地方馬・ライデンリーダーの勝利だった。

 そして、この勝利はまた、思わぬ"副産物"をも生んだ。

 このときの鞍上は、笠松競馬に帝王のように君臨していた「アンカツ」こと安藤勝己騎手。ライデンリーダーは、デビューから引退までの24戦、すべてアンカツさんが手綱をとった。

 ただ、アンカツさんは、笠松ではあまりにも勝ちすぎて、勝つことにいささか倦(う)いていた。そろそろ引退して調教師にでもなろうか、そんなふうにも考えていた矢先、ライデンリーダーと出会ったのだ。

 筆者は、アンカツさんがJRAのジョッキーになると決まった頃、一度、話を聞いたことがある。そのときの言葉として今も鮮明に記憶に残っているのが、アンカツさんが、しきりに「芝の競馬が面白くて......」と繰り返していたことだ。

 中央との交流で、中央の芝のレースに乗るうちに、すっかり芝のレースのとりこになった。勝っても負けても、そこに奥深さを感じて「また乗りたい」と思うようになった。そのことが、調教師への転身を考えるほど醒(さ)めかけていたジョッキーとしての「やる気」に火をつけたのだ。

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