有馬記念が有終の「キタサンブラック祭り」になる、これだけの根拠 (4ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

「中3週でレースに臨んだ過去6戦のうち、前走のジャパンカップだけ、当週と1週前の2本の追い切りで挑みました。それ以外は、前走から2週後の週末から追い切りを開始して、ウッドチップコースでの追い切りを3~4本消化するのが基本でした。そうしたことを踏まえれば、前走のジャパンカップはかなり特殊な状況でレースに挑んだわけです。

 それも、この秋3戦の最大目標が有馬記念だからです。

 秋の"古馬三冠"レースは、すべて関東圏で行なわれ、中3週で続きます。"ホーム"で戦える関東馬に比べて、その合間に長距離輸送がある関西馬の消耗度は相当なものです。その点を考慮すれば、天皇賞・秋から目いっぱい仕上げられないのは当然のこと。実際、天皇賞・秋に向けては、個人的には80~85点ぐらいの、ゆとりある仕上げに見えました。

 ただ、スピードや切れを求められない力のいる道悪競馬になったことで、その"ゆとり"がプラスに転じました。結果を考えれば、うれしい誤算とも言える底力での勝利でしたが、仕上がり途上でタフな競馬を強いられた分、ジャパンカップには暗雲が立ち込めました。そこで陣営がとった策が、追い切り開始日を遅らせて、疲れをとることに重点を置いた調整過程だったのです。

 その結果、ジャパンカップでは状態を上げることができず、現状維持から少し落ちた状態で出走し、3着に終わってしまいました。しかし、このときに一度緩めたことが、最後の有馬記念に向けては功を奏するのではないかと思っています」

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