渡仏した小林智調教師が語る
「フランス競馬界の日本へのリスペクト」

  • 小川由紀子●文・写真 text & photo by Ogawa Yukiko

フランスで唯一開業する日本人・小林智調教師インタビュー後編

前編の記事はこちら>>

 伝統と職人気質あふれるフランス競馬界に、日本から単身で乗り込み、現在、トレーナーとして活躍する小林智(さとし)師。今年のサトノダイヤモンドの凱旋門賞挑戦でも積極的にバックアップしたことで、その名前を見聞きした人も多いだろう。前編ではフランスで開業するまでの経緯を聞いた。今回は現状や今後の抱負について、話をしてもらった。

 ジョッキーとやりとりする小林調教師 ジョッキーとやりとりする小林調教師

――フランスで開業してからも、いろいろと難しいことに直面したのでは?

小林智調教師(以下、小林) それぞれの馬を、どのレースに使ったらいいのかな、といったことですね。どんな馬場がもっとも適した馬なのか、距離はどれくらいが合っているのか......。最初の頃は仲のいい調教師さんにアドバイスを仰いだりもしていました。みなさん、本当にやさしいんですよ。各厩舎で修業していた時代も、みんな本当に親切に指導してくれましたから。

――年数を重ねることで、開業当時とは違ったチャレンジも出てくるのでは?

小林 毎日勉強です。勝ち鞍にしても、多いに越したことはないですが、それはあくまで結果なので。それよりもいかに自分たちの仕事の質を上げるか、ということですね。レースは時の運もある。競馬は一番強い馬が勝つというものではなく、強くても負けるのが競馬なので。

「調教師は謝るのが仕事だよ」と角居(勝彦)先生にも言われましたが、常にどうすればもっとよくなるかを考えていないと前に進めない。周りがそれよりもすごいことをしていたら自分が置いていかれるだけなので。

――フランスの狭い競馬社会の中で、日本人であることの難しさを感じたことはありますか?

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