スプリンターズSの「刺客」ブリザード。
波乱の猛吹雪が日本馬を襲う

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 スプリンターズSの歴史を振り返ると、前述のように香港調教馬は2勝している。1頭は"アジアの英雄"ことサイレントウィットネスで、当時の近代競馬記録となるデビュー17連勝の金字塔を打ち立てたように、スプリンターズSを勝つにふさわしい実績の持ち主であった。もう1頭は2010年のウルトラファンタジー。後続を手玉に取る逃げ切りで、10番人気の低評価を覆した。実はこのウルトラファンタジーも香港では重賞勝ちはわずか1勝のみという実績だったのである。このときは、同じ香港のグリーンバーディーが人気を集めていたが、ウルトラファンタジーの激走によって、むしろ香港の短距離路線の層の厚さがより際立つ結果となった。

 さらにブリザードを管理するのは、そのウルトラファンタジーと同じくリッキー・イウ調教師。これまでにも、安田記念勝ち馬となるフェアリーキングプローンで香港スプリントを勝利し(但し、安田記念のときは他厩舎に転厩していた)、近年の香港の最強スプリンターの1頭にも数えられるセイクリッドキングダムなども管理している。そのイウ調教師があえてここに送り込んでくるだけに、なおさら勝負気配を感じずにはいられない。事実、ブリザードの遠征については、7月に終了した昨シーズンの半ばの段階で既に計画していたようだ。前走(9月3日)も2着に敗れたとはいえ、60kgもの斤量を背負ったもので、ここに向けて調整が順調であることがうかがえる。

 昨シーズン最後の出走となったGIチェアマンズスプリントプライズ(5月7日/シャティン・芝1200m)こそ、チグハグな内容でしんがり負けしているが、その前のGIIスプリントC(4月9日/シャティン・芝1200m)は、最後の直線の勝負どころで前をカットされる不利があった。やむなく一旦外に出して、体勢を立て直してから猛追した結果の4着入線で、その後、不利が認められて3着に繰り上がっている。このときに妨害したのが、続くチェアマンズSP を制するラッキーバブルスであった。不利さえなければ、ラッキーバブルスは完全にかわせる脚色であったし、上位2頭にも迫れたのではないかと思えた。

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